このままでは老後の準備ができず、次女の大学進学費用も足りない

倉田さんが私のもとにやってきたのは、次女が合格を勝ち取った後。娘2人を見事有名中学に合格させた代償として残ったのは、火の車と化した家計でした。

倉田家の家計は夫の給料60万円のうち、16万円が住宅ローン。受験のための塾が終わっても私立の授業料は高額で、毎月1人あたり8万円の授業料が高校卒業までの6年間かかります。さらに大学附属ではないため、中学入学と同時に姉妹とも再び塾に入っており、受講料は1人2万円。加えて習い事の月謝を入れると結局、2人合わせて毎月20万円以上の教育費が重くのしかかっていました。

娘たちの5年間にわたる受験戦争ですっかり貯金をすり減らしていた倉田さん。私のもとにやってきた時の貯金は100万円でした。高給取りにもかかわらず夫のお小遣いが毎月3万円というのも頷けます。

大学進学費用は毎月の学資保険で貯めていたのでどうにかなるとしても、このままでは老後の準備ができません。夫の収入が減らされるなど、どこかで少し歯車が狂えば、下の子は奨学金での進学や、もっとも避けたい教育ローンに手を出さなければいけなくなるような状況でした。

しかも追い打ちかけるのが、「年収1000万円世帯」という事実です。倉田家のような高所得家庭は国や自治体の補助対象外となるケースが多く、昨年からスタートした私立高校授業料の実質無償化の恩恵も受けられません。

※支援が受けられるかどうかは、「住民税の課税標準」で判定されるため、実際には、夫婦の働き方や家族構成などによって、年収1000万円でも支援を受けられるケースもある。

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可能な限り、教育ローンには手を出してほしくない

一方、親の資金力がなくなってきている今、学校独自の奨学金がぞくぞくと創設されています。後で返済の必要な貸与型がほとんどですが、成績優秀者であれば返済義務のない給付型も、少ないながら存在します。勉強ができた私の知人の子は、あえてランクを少し下げて特待生で大学に入学し、4年間授業料無料で勉強していました。

倉田さんのように早い段階から名門私学を希望するのではない場合、通常、教育費の山場は大学。親はそこに向かってコツコツとお金を貯めていくことがセオリーです。

ちなみに、先ほどお話した教育ローンは金利が3~4%と、非常に高い。「このお金がないと子供が入学できない」というところまで追い込まれた場合には仕方ないのですが、その場合にも、即時入金される銀行で返済計画を立ててもらえるならまだ安心でしょう。

逆をいえば、教育ローンとはそれくらい手を出したくないものとも言えます。住宅ローンと並行して教育ローンを走らせてしまったら、老後資金を貯める間がなくなってしまうのは必然ですから……。