欧州でも「日米台」寄りの動きが
韓国企業が世界トップシェアをもつDRAMなどメモリ半導体分野でも日米台の連携が進む。注目したいのが米マイクロンだ。マイクロンは最先端の“1α(回路線幅10ナノメートル台)”のDRAM生産技術を確立し、世界のメモリ需要を取り込んだ。その結果、同社の営業利益率はサムスン電子を上回った。
さらに、わが国でマイクロンは、本邦半導体部材や製造装置メーカーと連携して次世代のDRAMの生産を目指す。マイクロンは台湾事業も重視している。それによってマイクロンは最先端の生産技術開発を加速し、中国企業との競合に備えようとしているのだろう。
欧州でも、日米台との連携を重視する動きが出始めた。現在、蘭ASMLは、回路線幅5ナノメートルの半導体生産に不可欠なEUV露光装置を供給できる唯一の企業だ。ASMLは米国の知的財産などを必要とする。オランダ議会は2月、中国におけるウイグル族の状況を欧州で初めてジェノサイドと認定した。それは、米国との連携強化が経済の安定に必要との考えに基づいた決定だろう。
“中国包囲網”は着実に進んでいる
6月の北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議は、中国を脅威と位置付け、加盟国間の連携を強化して中国に対応する方針を共同宣言に記した。そう考えると、今回のG7サミットに韓国が参加した意味は重い。豪、印、南アフリカ、韓国がG7サミットに招かれた背景には、国家資本主義体制を強化する中国への包囲網を整えようとする英国をはじめ主要先進国の狙いがあっただろう。
特に、豪印は中国との関係が冷え込んでいる。つまり、G7サミット参加によって韓国は、米国をはじめ主要先進国との連携にもとづく経済・社会・安全保障を目指すか否か、立場を明確にするよう国際世論から求められたといえる。
今後、台湾海峡、最先端の半導体生産技術、人権など多くの分野で米中の対立は激化する可能性が高い。中国では広東省にある台山原発の1号機で燃料棒の一部が破損した。中国は脱炭素のために原子力発電を重視し、仏企業との合弁で台山原発を運営している。
その一方で、米国は中国が原子力発電技術を軍事転用する恐れがあるとして輸出管理を強化した。燃料棒破損をきっかけに、米国が中国の原子力発電事業や脱炭素に関しても圧力を強める展開は否定できない。