孤独死は個人の問題に還元できない

過酷な競争社会を生きる現役世代は、地域とのつながりが希薄だ。職縁を失えば、孤立というブラックホールへ真っ逆さまに転げ落ちていく。それは、明日の私や、あなたの姿かもしれない。

コロナ禍で孤独死への注目が高まる中、政府は今年2月、内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」を設けた。私も先日、有識者としてヒアリングに呼ばれた。そこでは「孤独死の定義づけと実態把握をしてほしい」と主張した。

私が日々取材で接している現場の死者たちは声を持たない。生前にも声を上げることすらできなかった人たちがほとんどだ。だからこそ、私は国として「死」の現場から、現役世代の孤独や孤立の現状の実態を把握し、生きづらさを抱える人たちと向き合ってほしいと切に訴えた。もはや、これは個人の問題に還元されることではないからだ。

私たちの社会は、こういった人間関係からこぼれおちた人々に目を向けなければならない。ある特殊清掃業者によると、これまで長くても死後1カ月ほどで遺体が見つかっていたが、コロナ禍で死後3カ月目以降に発見されるケースが増えているという。今年の夏を、去年から続く孤独死の夏にしないために、今後も日本が抱える孤立の現状を伝え、向き合っていきたいと思っている。

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