自動車産業の雇用を守るため「イノベーションのジレンマ」を防げ

水素エンジンは確かに走行中にはCO2を排出しないが、CNへの取り組みがトータルなエネルギー効率を高めていかねばならないものだと考えるならば、必ずしも良い選択肢だとは言えないのではないか。

「エンジンの生産がなくなると国内の19万人の雇用が失われる」と豊田社長は言う。2050年に向けて電動化への変化をできるだけなだらかにするというのは経営者として当然のことだと思う。ただし、欧米や中国が電動化、中でもEV化に大きく舵を切っている現状を踏まえれば、自動車産業の主要市場でのメインシナリオは電動化と考えざるを得ない。

つまり内燃機関に存続の道があるとしても、グローバル市場の中では限られた道となってしまう。その道に過剰な期待をかけるのは日本の部品業界を含めた自動車業界をミスリードしかねない。自動車の製造から販売、バス・タクシー、ガソリンスタンドまで含めた関連産業の就業者数は550万人という。その雇用を守るために、いまなにをするべきなのか。競争力のある商品を持つ企業ほど新市場への参入が遅れがちになる「イノベーションのジレンマ」に陥らないことを願うばかりだ。

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