福岡市だけではハンコレス化できない届もある
なお、国や都道府県でもようやく押印廃止の動きが進んでいますが、婚姻届や出生届、転入届など、国や県の法令で押印(や署名)が義務づけられており、福岡市だけではハンコレス化できないものもあります。
ただし、たとえば、福岡市に引っ越してきた人の転入届は、あらかじめ自宅などでオンラインで住所や名前などの情報を入力。役所の予約を取ったうえで、指定の日時に役所に行って、プリントアウトされた書類に署名するだけで済むようにしています。
国やほかの自治体のハンコレスが進まない限り、完全なハンコ撤廃にはなりませんが、それでも、市民のみなさんの負担は、かなり軽減されたのではないかと思います。
福岡市の成功事例を参考に、内閣府がそのノウハウをマニュアル化し、広く全国の自治体へ提供しています。今後、ほかの自治体にもハンコレスとオンライン申請の波が広がっていくことを期待しています。
職員からの「ハンコをなくして本当に大丈夫なのか」
ちなみに、ハンコレスへの取り組みを始めた頃は、職員からも、「ハンコをなくして本当に大丈夫なのか」「市民との間でトラブルになるのではないか」「今、そんなに問題が起きてないのに、なぜわざわざなくさなければならないのか」といった声が上がっていました。
正直、公務員にとっては、市民サービスが向上してもしなくても、給料は変わりません。ハンコレスによって市民のみなさんの手間が省けることはわかっていても、ハンコレスにするために、今までの書類や手続きを変えるのは、ただ手間がかかって面倒くさいだけ。そう考えていた職員も、少なからずいるのではないかと思います。
実際、「ハンコレスを実施する」と決めてから、「どの書類にどのようなハンコが真に必要なのか」を整理し、手続き的な課題をクリアするのに、2年近くの月日がかかりました。