経営学者のクレイトン・クリステンセンさんは著書『イノベーションのジレンマ』で、企業がイノベーションを起こせない理由を明快に解説しました。そこで彼が指摘したことは、企業だけでなく人間にも当てはまります。

過去にうまくいった方法論に固執していると、新たな発想に立てないことがあるのは、人間もまた同じです。優秀だった人が、ある時点から自身の成功話に終始してしまうケースなどはこの典型例です。

アップデートが必要な人の3つの兆候

かつて携帯電話や家電製品・自動車は、古くなれば買い替えるか、乗り換えるほかありませんでした。ところが現在のPCやスマートフォンは定期的に機能を向上させ、あるいはバグをなくすために知らせが来て、OSが使える限り勝手にアップデートしてくれます。

しかし人間は違います。勝手にアップデートしてくれません。残念ながら自分で気がつくしかありません。アップデートが必要な人には、見逃してはいけない3つの兆候があります。

<ガラケー、FAXは論外>

例えば使い勝手がいいからと今もガラケーを使っている人です。NTTドコモは2026年、auは2022年、ソフトバンクは2024年で3G回線のガラケーサービスを終了しますから、その先現在の利用者は困ることになります。

コロナ禍で医療機関や自治体、保健所など複数の関係機関に共通のシステムがなかったため、国内では仕方なくFAXが使用されましました。こうしたやむにやまれぬ状況ではないのに、昔ながらにFAXを頻繁に利用している人も心配です。

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<対面だけをコミュニケーションだと思い込んでいる>

ZoomやGoogle Meet、Wherebyなど使い勝手のよくなったオンラインツールを使わないまま、「毎日会社に出社して働きたい」とか「ウチの会社の仕事はテレワークではできない」「テレワークなんか嫌いだ」「実際に対面して話し合ってこそコミュニケーションだ」と信じ込み、新しい働き方に前向きでない人も心配です。

パンデミックが加速させた新たなビジネスツールやシステムを試すことなく、新しい働き方に無頓着な人たちは、年齢や性差を問わず、各世代に存在しています。決してミドルエイジ以上の傾向ではありません。

<資料も、紙の地図もプリントアウト>

ネットやSNSなどを利用せず、テレビや新聞などマスメディアしか接触していない人は、入手する情報が偏ることがあります。DXやITの活用をしないまま、「機械に頼るな」「そういう技術は俺にはわからない」と思い込んでいる人もいます。仕事の仕方が10年前と変わらず、非効率な方法をそのまま踏襲しているわけです。

新規取引先を訪問する際に、Googleマップなどを使わず紙の地図をプリントアウトしている。プリントアウトした紙の書類でないと目を通さない。昔から皆そうしているからという理由で、ハンコを押す書類の手続きを変えようとはしない人たちなども同様です。