日本は子育てに対して冷たすぎる

とはいっても、たかが舌打ちです。これだけ多くの人がいる社会、考え方も十人十色なわけで、子育てに対して冷ややかな考えをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

いちいち気にするだけ損かもしれません。しかし、日本の場合、この「子育てに対する冷ややかな考え」はただの雰囲気ではありません。私たちの生活に具体的な影響を及ぼす政治にまで浸透しています。例えば、こんなニュースです。

待機児童の解消に向けた政府の新たな計画作りで財源探しが難航している。(中略)財務、厚生労働両省を中心に児童手当の見直しによる財源捻出も検討している。たとえば所得制限の基準を超える高所得者への月5千円の特例給付を廃止・縮小する案がある。妻が専業主婦で子ども2人の世帯で年収960万円以上が対象になる。(日本経済新聞、2020年11月7日朝刊『児童手当など見直しも 待機児童解消へ財源探し』)

政策から見える政府の本音

もう、怒りを通り越してグッタリしてしまいました。子どもが一人なら年間6万円、二人なら12万円の減収です。これは我が家の家計には大ダメージです。しかも、その理由が「待機児童の解消」とな……?

前回の記事でご紹介した通り、日本はただでさえ家族関連支出(子育て世帯に対する政府の財政的支援)が、対GDP比で先進国最低レベルです。そしてこれが、日本の深刻なジェンダーギャップ(=少子化の原因)が改善しない理由のひとつでした。なのに、支出額を増やすどころか、同じ子育て世帯の支援メニューの中でやりくりするってどういうこと? しかも、待機児童という保護者のキャリアを根こそぎ奪う可能性のある深刻な問題の財源、まだ確保してないんかい……!

その後、本件は子育て世帯からの強い反発を受け、2020年12月に「夫婦のうち高い方の年収」が1200万円程度以上の世帯を対象とすることに変更されました。最初は夫婦二人の年収の合計で議論されていましたが、「夫婦のうち高い方の年収」基準に変更され、手当が削減される世帯は減りました。やっぱり、おかしな制度に対し、声をあげるのは大事ですね! とはいえ、家族関連支出の削減には違いありません。

政策は、政府から国民への雄弁なメッセージです。政府は私たちにこう言っているのです。

「もうお金なくて面倒見切れないからさー、自分たちでどうにかして」