男女の不平等が、少子化の根源

でも、私は、その答えを知っています。たくさん聞いてきた、というべきか。それは、冒頭の妻と友人の会話に集約されています。出産育児の負担が、女性に偏りすぎているのです。つまりは、この国の男女不平等、いわゆる、ジェンダーギャップがひどすぎる。女性のキャリアの機会損失が大きすぎるともいえます。

ジェンダーとは、「社会的な性差」のことで、生物学的な性差である「セックス」と対比して使われます。わかりやすいのは、妊娠・出産・育児でしょう。妊娠出産は女性にしかできませんが、育児は男性にだってできます。でも、なぜか社会がその仕事を女性にばかり押し付けている現状があります。こうした、性別に基づいて社会が与える枠組みを「ジェンダー規範」と言います。

世界経済フォーラムは「Global Gender Gap Report 2021」の中で、各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数を公表しています。この指数は、経済、政治、教育、健康の4つの分野のデータから作成され、0が完全不平等、1が完全平等を表します。2021年の日本の総合スコアは0.656、順位は156カ国中120位でした。過去最低だった2020年の121位からわずかに1つ順位を上げましたが、主要7カ国(G7)では変わらず最下位です。お隣の中国(107位)や韓国(102位)はもとより、アラブ首長国連邦(72位)より下です。

どうしたら女性に対する不当な差別を無くせるか

「いやいや、俺たちだって頑張ってるんだし、さすがにそんなに下ってことはなくね⁉」という男たちの疑問の声が聞こえてきます。確かに、私たち日本男児は頑張っています。数年前と比べれば、状況は間違いなく改善されていると思います。でも、このジェンダーギャップ指数は、相対評価です。他の国の方がもっと深刻な危機感をもって、真剣に取り組んでいるのです。

そして実は、このジェンダーギャップ指数と合計特殊出生率の間には相関関係があります(図表2)。男女平等な社会ほど、女性が安心して子どもを産めるのです(ただし、先進国に限った現象)。

日本社会に深く巣食うジェンダーギャップを撃滅しない限り、いくら“少子化対策”を講じたところで効果を発揮しません。私たちが考えるべきは「どうしたら子どもが増えるか」ではありません。そんなこと(と、あえて言いますが)より「どうしたら女性に対する不当な差別を社会から一掃することができるか」です。それを達成して初めて、私たちは少子化について正面から考えるステージに立てるのではないでしょうか。