中国の宇宙開発は軍部によって主導されている
これまで中国は2019年1月に世界で初めて月の裏側に無人の探査機を着陸させた。昨年6月には米国のGPS(全地球測位システム)に対抗する衛星測位システムも完備した。宇宙ステーションの完成は目前に迫り、今後、飛行士の月面着陸を経て、火星への有人飛行を進める。アメリカを意識した宇宙開発で、中国はこの分野でも覇権主義を押し通すつもりだ。
中国の宇宙開発は軍部によって主導されている。中国は1950年代に核爆弾、弾道ミサイル、人工衛星を並行して開発する「両弾一星」を掲げた。2007年には衛星の爆破実験まで実施したが、これは宇宙での実戦を想定した軍事的実験だ。衛星測位システムも軍事転用される可能性が高い。
日本は2011年に完成したISS(国際宇宙ステーション)に、欧州各国とともにアメリカ側の一員として参加している。アメリカ追従型ではあるが、アメリカを支えながら宇宙開発を進め、無謀な行為を繰り返す中国には欧米各国とともにはっきりと「ノー」と言うべきである。
「開発に伴う責任を置き去りにしたままでは許されない」と読売社説
5月11日付の読売新聞の社説は「ロケット落下 中国の安全軽視は許されない」との見出しを掲げ、こう書き出す。
「中国は宇宙開発を急速に進め、今や米国やロシアに肩を並べる存在になりつつある。しかし、開発に伴う責任を置き去りにしたまま、宇宙への進出を急ぐことは許されない」
「責任」という言葉ほど中国と縁遠いものはない。宇宙開発だけではない。沖縄の尖閣諸島海域への不法侵入、台湾に対する軍事威嚇、香港と新疆ウイグル自治区での人権抑圧、東・南シナ海での侵略行為、新型コロナ感染拡大の隠蔽など、きりがない。
習近平政権は中国共産党と中国国家の発展のためには、世界の国々を犠牲にしても構わないと考えている。責任感など持ち合わせていないのだ。
最後に読売社説は主張する。
「ロケットの残骸が他国に落下した場合の賠償責任などを定めた現行の国際条約は、内容が不十分で実効性に乏しい。国際的なルール作りが急務で、中国もその役割の一端を果たさねばならない」
その通りである。いま求められるのは、中国に対し、他国に被害を与える宇宙開発を止めさせることのできる「国際ルール」作りである。欧米を中心とする国際社会がいまこそ、動くべきだ。