「米国経済の独立宣言」で市場は大混乱
4月2日、トランプ大統領は全世界を対象に、相互関税の制度を導入することを発表した。発表の中で同氏は「米国の経済的な独立宣言であり、米国が再び偉大、裕福になる記念日として永遠に記憶される」と宣言した。
今回のトランプ氏の政策は、第2次大戦後続いてきた世界の自由貿易体制を根底から覆す措置といえる。一言でいえば、「米国はグローバル化の世界から“独立”し、自国第一主義を推進する」と宣言したことになる。これによって、世界の通商・貿易の体制が大きく変化するだけではなく、政治・安全保障などさまざまな点で重要な変革が起きていると理解すべきだ。
トランプ氏が、どれだけ真剣に理解しているか定かではないが、間違いなく、今後の世界情勢に重大な変化をもたらすはずだ。世界経済の成長を支えてきた自由貿易体制の終焉を一方的に宣言したといえるだろう。
しかも、今回の相互関税率を設定した手法はいかにも恣意的だ。そうした米国の一方的な関税引き上げに対し、中国、欧州連合(EU)、カナダは対抗措置をとると即時に表明した。これから、貿易戦争は激化するだろう。貿易戦争で多くの国がマイナスの影響を受ける。
関税率の算定方法が恣意的すぎる
ただ、最大の負のインパクトを受ける国の一つは米国になるはずだ。最大の問題は、米国の中間選挙を来年に控えて、トランプ氏がどれだけ関税制度に固執するかだ。株価の下落や景気後退の懸念から、トランプ大統領が早期に関税政策を見直すことを期待したい。
相互関税は英語でReciprocal Tariffと表記する。Reciprocalとは、相手国が課する関税と同じ負担額の課税を行うことを意味する。今回のトランプ氏の相互関税率の算定には、多くの専門家から設定が恣意的過ぎるとの批判が出ている。
トランプ氏の相互関税は2つの要素からなる。一つめは、原則としてすべての国に、一律で10%の関税を課す(基礎関税)。4月5日に基礎関税は発動した。もう一つは、国・地域ごとに“上乗せ関税”を課す。主な国の相互関税率はわが国が24%、中国が34%、EUは20%だ。トランプ氏が高関税と批判したインドは26%、中国から生産拠点が移転しているベトナムには46%の相殺関税を課す。