もしも都市部に落ちたら、あわや大惨事だった
中国政府は5月9日、打ち上げた大型ロケット「長征5号B遥2」の残骸が同日午前10時24分(日本時間午前11時24分)に大気圏に再突入した、と発表した。ロケットの残骸の落下地点は、インド洋のモルディブ付近の海域だった。
幸い、けが人などの被害はないようだが、もし人口の多い都市部に落ちていたら間違いなく大きな被害が出ていたはずである。
中国は猛省してしかるべきだ。ところが、である。中国有人宇宙プロジェクト弁公室は「ロケットが落下したのは北緯2.65度、東経72.47度の周辺海域で、大部分は再突入時に燃え尽きた」と伝えるだけだった。日本を含む世界を危険にさらした責任など微塵にも感じていない。
中国にはこれまで何度も驚かされてきたが、高い技術力と深い知識のある国々が協力し合わなければならない宇宙開発において、卑劣な行動は許されない。
昨年5月には西アフリカの民家に落下した
ロケットは通常、燃え尽きずに残骸が地上に落下する危険性がある場合、海など人のいない場所や人家のないところに落ちるよう事前にコントロールされている。しかし、中国のロケットにはその制御がないのである。
アメリカの航空宇宙局(NASA)と軍当局は打ち上げ直後から大気圏への再突入時に燃え尽きずに残骸が地上に落下する危険性があるとみてロケットの軌道を追っていた。
中国には前科がある。昨年5月にも今回と同型のロケットを打ち上げた後、切り離された1段目のロケットの破片とみられる物体が西アフリカのコートジボワールの民家の庭先などに落下した、とロイター通信などが報じている。
今回のロケットは今年4月29日に、中国が計画している独自の宇宙ステーション建設のために打ち上げられたものだが、それにしてもなぜ、中国のロケットは残骸を地上に落下させてしまうのだろうか。