軍事費増大の要因は中国ではなく米国にある
さて、AFPの記事では軍事費増大の要因について、中国の海軍増強を挙げている。実際、近年の中国の軍事費増は目覚ましいものがある。SIPRIのデータでは、中国の軍事費は2001年に日本を追い越したが、2020年には日本の5倍を超えるまでに増大している。
だが、この数年に限ってみれば、世界の軍事費増大の要因は米国にあると考えられる。中国は前年比1.9%の伸びに対し、米国は4.4%伸びており、比率だけでなく増大額でも米国の伸びが大きい。
もっとも、これはかなりイレギュラーだ。2001年から2020年までの20年間を比較してみると、米中の軍事費の伸び率で、米国が中国を上回っていたのは3年にすぎない。そして、そのうちの2年は2019年と2020年だ。近年の米国のこの伸びはなぜだろうか。
この要因としては、最近のトレンドである国家同士の正規戦への回帰が挙げられるだろう。
2001年の同時多発テロ以降、非国家主体との対テロ戦争に明け暮れてきた米国であったが、先月14日にバイデン大統領は、今年9月11日までにアフガニスタン駐留米軍の撤収する方針を表明した。
20年続いた対テロ戦争に区切りをつける形になるが、代わって中国、ロシアを念頭においた対国家戦争への備えにシフトしている。トランプ前政権は核兵器や無人兵器といった分野を重点に置き、2020会計年度の国防総省の研究開発関連予算は1000億ドルを超えるまでになった。