大学まですべて公立でも教育費は約1000万円

さて、話を元に戻しましょう。質問は幼稚園から大学まですべて公立に通った場合の教育費でしたね。その金額は、約1000万円です。

出所=『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』(あさ出版)より

文部科学省が2019年12月に発表した「平成30年度子供の学習費調査」によれば、幼稚園から高校まで公立の場合は543万5958円。そして、日本政策金融公庫が2020年3月に発表した「令和元年度 教育費負担の実態調査」によれば、国公立大学に自宅から4年間通学した場合は約499.4万円かかります。

よって、合計すると1042万9958円となります。

この金額を見て、将来が不安になるかならないかは人それぞれでしょう。ただ、ゆとりある老後生活を送るため、定年退職までに2000万円は貯めなければいけない(老後2000万円問題)というのに、子どもを1人育て上げるのに1000万円以上かかることを思うと私は不安になります。なにせ私の場合は子どもが3人いますので、必要な金額は単純計算で3倍に膨れ上がるわけですから。

子どもが習い事をしたい、私立に行きたい、留学したいとなれば、親としては経済的な理由で「ダメだ」とはいいたくないですし、可能な限り応援してあげたいものです。さらに子どもの洋服やレジャー用品などにもお金がかかります。

そう考えるとお金はいくらあっても足りない。子ども1人ならまだしも、3人ともなると育てるのはちょっときついな……。私でなくても、そんなふうに考える人は多いのではないでしょうか?

子育てを通じて国の在り方を考える

ただ、私が3人の子どもを育てる中で感じるのは、子育てをすることは、自分が子どもだった時の親の気持ちを、我が子を通じて再体験しているということです。

あの時、「親はこう思っていたのではないか」、「この子の将来を考えると……」など子どもの時は考えることもなかったようなことを考えられるようになりました。

そうやって、子育てを通じてある意味での修行をすることで、子どもや孫には素晴らしい国で楽しく豊かに暮らしてもらいたいという強い思いが芽生え、一国民として国の在り方を考える機会が生まれる。私はそう思っています。

つまり、多くの人が結婚をせず、子育てもしないという選択肢を取らざるを得ない状態を放置するのであれば、それは「いまだけ、自分だけ」のことばかりが気になり、国の在り方や行く末を考える機会に恵まれない人を増やしてしまうことにつながるのではないかと思うのです。