同じ日本で日本人よりはるかに感染リスクが高い現場

元留学生で、現在は東京都内の「監理団体」で企業へ実習生を派遣する仕事をしているベトナム人のタンさん(20代)が言う。

「コロナのクラスターは今、日本人にもあちこちで起きています。でも、実習生や留学生たちは、一般的な日本人よりもずっと感染リスクが高いことは間違いない。仕事は肉体労働ですから、リモートワークなどは無理。しかも寮などで共同生活をしている。私が担当している実習生も先日、建設現場で働く5人が感染しました」

幸い感染した実習生たちは軽症ですんだという。仕事を休んだ間の給料も保証された。実習生よりも悲惨なのは、コロナに感染した留学生たちである。

アジア人留学生が直面する現実

新型コロナ「第3波」が全国的に広がりつつあった2020年12月、関東地方の専門学校で日本語教師を務めるAさん(女性・30代)からこんな連絡があった。

「教え子のベトナム人留学生たち数人がコロナに感染しました。夜勤のアルバイトをしていて感染したようです」

Aさんによれば、留学生たちが働く2つの工場でクラスターが相次いで発生したのだという。1つは食品関連の工場で、もう1つが化粧品メーカーの工場だ。どちらの工場も24時間体制で稼働していて、日本人の働き手が集まらない夜勤を中心に多くの留学生バイトが働いている。

化粧品メーカーの工場には私も馴染なじみがある。数年前、日本語学校に通うベトナム人留学生に密着取材した際、留学生のアルバイト先の1つがこの工場だったのだ。工場までの通勤を見届けるため、留学生が乗った人材派遣業者の送迎バスをレンタカーで追いかけたことがあった。

その留学生は、オックさん(当時27歳)という女性だった。彼女は日本語学校の初年度分の学費や寮費などで、150万円程度の借金を背負い来日していた。

その借金を返済し、加えて翌年の学費を工面するためには、留学生に許されている「週28時間以内」のアルバイトでは不可能だ。そのため、彼女は2つのアルバイトをかけ持ち、法定上限に違反して働いていた。アジア新興国出身の留学生たちの多くに共通する現実である。