原稿を訂正させるために100万円を用意

それで、僕に100万円の札束を渡してきたから、「いらない」と言ったら、「わしが一度出したもんを引っ込められるか」というようなことを言ったわけです。それでも受け取らないでいると、「5時半に築地の水炊き屋に来い」と言うから……。

【鈴木】築地の有名な、政治家や詐欺師御用達の……。

【溝口】こちらは2人で行ったら、向こうの一行が2人もいて、うち3人は女だった。で、銀座のクラブを3軒回ったんです。僕の計算でいうと、その晩、200万円以上は使ったでしょう。

おれの遊びは派手だろうと見せつけ、女には1万円のチップをばらまいていました。到底われわれがお返ししたくてもできないレベルの金を使っていた。力を見せつけようとしたんですね。ですから、損得勘定では計り知れないところがある。

溝口敦、鈴木智彦『職業としてのヤクザ』(小学館新書)

【鈴木】単純明快さを尊ぶ気風はありますよね。「すごい!」と称賛されたがる幼稚さ、よく言えば可愛さもあります。回りくどくないので爽快に感じる部分もある。でかければいい、高ければいい、その価値観はとてもシンプルでわかりやすい。

【溝口】そうとも言えるかもしれない。

【鈴木】貧困の中から出て、ヤクザという手段で夢を掴んだ人たちだから、過去に復讐するかのように金を使うのかもしれません。いいもんを食って、いい女を抱いて、いい車に乗って……マシンガンの弾のように金という実弾を撃つ。その姿は哀しくもあります。

関連記事
「男も女もデリヘルを必要としていた」被災地で性風俗取材を続けたライターの確信
ブッダの言葉に学ぶ「横柄でえらそうな人」を一瞬で黙らせる"ある質問"
「お金が貯まらない人の玄関先でよく見かける」1億円貯まる人は絶対に置かない"あるもの"
「仕事やお金を失ってもやめられない」性欲の強さと関係なく発症する"セックス依存症"の怖さ
富裕層は「スマホ」と「コーヒー」に目もくれない