目を向けるべきなのは「L型企業」

そこで目を向けるべきは、残りのGDPの7割(人材でみれば8割)の世界です。グローバルではなくローカルで商売をしている、私がL型企業群と呼んでいる小売、卸売り、飲食、宿泊、エンターテインメント、地域金融、物流、運輸、建設、それに医療や介護、農林水産漁業です。

これらはコロナ禍で私たちの社会生活を支えてくれている、なくてはならない働き手、エッセンシャルワーカーとしてその重要性が再認識されている人々の多くが働いている産業群でもあります。

L型の特徴は地域密着で、その地域にいる人たちとフェイス・トゥ・フェイスでサービスをしている産業が多いことです。人と人とが顔を突き合わせて成り立っている産業は、結局のところ、グローバル化がいくら進んでも空洞化しませんし、工場のように移転をすることもありません。そして、デジタル化で効率化は進むかもしれませんが、最後は人手がどうしても必要な産業になります。

たとえば5G導入による遠隔医療の可能性なども議論されていますが、遠隔手術を行うにしても、現段階では画面の前に人はつきっきりになります。何かが起きた時のために患者さんの近くにも医師や看護師は必要です。

いま挙げたような産業は、新型コロナ禍で影響を受けてしまいましたが、メディア上の危機感はイマイチ薄かった。テレビ局は消費増税の影響などを新橋の街頭で大企業勤務のサラリーマンに聞きたがります。

しかし彼らは人口的にはマイナーな存在です。結局、GDPの7割を担うL型産業に8割の人材が従事しているのに、彼らの話は後回しです。

G型が日本経済の中心であり、G型企業が凋落していることが日本経済の根源の問題であるかのような言説がまかり通っています

日本にGAFA級の企業ができても経済成長できない

もちろんコロナ禍によってG型企業も打撃はあります。全日空は大きなダメージを受け大幅な人員削減を視野に入れた経営再建策を打ち出していますし、LCCのエアアジアは破産申請を行いました。それでもL型に比べれば概して体力がある人たちの打撃であり、グローバル製造業は中国経済の急回復や巣ごもり需要で下支えされている部分もある。実はもっと弱いところに痛みもダメージも生じているんです。その大半がL型産業に従事しています。

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私の主張は日本経済の主流はG型産業ではなく、L型にあり、地域経済、地方経済が全国的に回復することなしに日本経済の復興はありえないというものです。GAFAのような企業が日本から生まれても日本経済全体を回復させることはできないんです。

そして、L型のほうがその先の日本の経済成長の上でも伸び代がはるかに大きい。付加価値生産性で言えば2倍、3倍の成長が見込める企業群が大量に残っています。なぜかといえば、まだまだ生産性が低く、デジタル化も進んでおらず、旧態依然とした日本型経営が主流だからです。