ポテンシャルや事業の割に低賃金な産業が多く、ここが変われば確実に消費の向上、経済成長の底上げになります。GDPとは付加価値生産額の総計ですから。生産性を上げるためにはデジタルシステムの導入がかなり効果を持ちますし、私が以前から主張しているように、最低賃金については政治主導でもっと上げるべきです。

産業構造が大量生産大量輸出型の加工貿易型でなくなった現在、歯を食いしばって低賃金で頑張る産業や企業を国内に残す意味はありません。実際、そういうモデルの工場に行ってみてください。大半が外国人労働者だったりする。それもブラックな働き方をしている。

【田原】L型のほうがかかわっている人が多い。

【冨山】だから、インバウンドに力を入れ、イベント誘致を進めるようになったわけで、観光業で人を雇用しようという動きが高まりました。地方都市を中心に飲食業もコロナ以前は好調でした。

【田原】L型企業の多くは今ね、元気がない。おまけに今回のコロナでやられているので、さらに疲弊している。さらにいえば、後継者がいない。本当に地方経済が再生できるのか。僕はよくわからない。

需要はあるが人手不足が深刻なL型企業

【冨山】まず、はっきりさせないといけないのは、私が地方再生といったときの地方は、限界集落を指した言葉ではないということです。なぜか日本で地方再生、地域活性というと、限界集落の話になりがちなんですが、そうした場所にバスを通す、介護サービスや買い物の宅配という事業を行き届くようにするためにも、最も大事なのは地方の中核都市の再生です。

ローカルバスが停車
写真=iStock.com/CHENG FENG CHIANG
※写真はイメージです

Lの領域はリアルな産業の集合体なので、運輸、介護、医療、飲食、観光産業も典型ですけど、どれも「そこ」でしかできない仕事がすべて含まれます。こうした課題はコロナ以前からずっとあります。L型産業は需要があるのに人手が足りない産業になっていたんです。

【田原】地方はみんな人手が足りない。第一、人口がどんどん減っている。

【冨山】そうです。生産労働人口が先にいなくなっているので、マクロでみると働き手が減っています。ですが、人間ご飯も食べるし、やっぱり食堂は必要だし、旅行もしますから泊まるところも必要です。

それから高齢化により医療・介護はどんどん必要とする人が増えていきます。運輸も同じです。コロナ禍でよくわかったと思いますが、リアルで物を運んでいる人たちが様々なインフラを支えています。

人は年を取ると、公共のバスを頻繁に利用するようになります。民間のバスも同様です。こうした産業は人がいる限り必要不可欠です。民間で言えば、赤字路線があったとしても別の黒字部門でカバーするだけの企業体質になっていることが多いのですが、それでも多くの人の幸せにつながっています。