仕事で成果が出ないと悩んでいる人は、どうすればいいのか。経営共創基盤グループ会長の冨山和彦氏は「もし東京にいるなら、地方に移住したほうがいい。東京で幸せになれるのは一部のエリートだけだ。本人がつまらないプライドを捨て、謙虚に本気で頑張れば、地方ではピカピカの素晴らしい人材だと思ってもらえる」という――。(第2回/全5回)

※本稿は、冨山和彦、田原総一朗『新L型経済 コロナ後の日本を立て直す』(角川新書)の一部を再編集したものです。

公園で休む中年のビジネスマン
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IT技術を活用して「分ける化」と「見える化」を進める

【田原】冨山さんのバス会社(主に東北地方で展開している「みちのりグループ」)がなぜうまくいっているのか。詳しく話を聞きたい。

【冨山】私たちはまず経営のプロフェッショナルです。これまでお話をしてきたように、経営をわかっている人材は地方には少ないんですね。だから、まずそこに優位性があります。僕らがバス事業のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を重要指標に定め、どこにコスト削減の余地があるのか、削るだけでなく、どこに設備投資が必要なのかも徹底的に見極める。

とにかく丁寧かつ忍耐強く「分ける化」「見える化」と改善改良を続ける。そのために有用なIT技術、デジタル技術も活用します。必要十分な範囲で最も安いツールはないかと検討していきます。そうすると、たとえば福島交通にせよ、茨城交通にせよ、人口減少で慢性的な赤字だった地方バス会社が、持続的な経営改善努力の結果、黒字化して行きます。

加えて今はスケールメリットを持っています。こうした会社の改造、トランスフォーメーションが進んでいくと周辺のバス会社がグループに参加を希望してくれます。結果的にグループ全体で傘下に各地域のバス会社を抱えていて従業員だけでも5000人という規模があります。

そのメリットは単純にいえば、修繕や設備ではバラバラであった部品交換基準を輸送の安全性を担保しつつ最適化したり、他社とは違うバス停を設置できたりするといったことが挙げられます。部品の交換基準を見直したり、部品などの調達コストの情報共有を行ったりすれば、当然ながら大幅にメンテナンスコストは下がり、これはデジタル化を進める時にも大きな武器になります。

また、人が貼り替えていたバスの時刻表を、デジタル表記に変えればこの人たちは別の仕事をすることができて、会社の生産性は一気に上がりますよ。