シャープは1200億円の資本金を5億円に減資

こうした中小企業への優遇措置は、ベンチャー企業などの中小零細企業の税負担や税金の支払い事務を軽減することが狙いだ。本来、大企業が節税対策として1億円以下に減資することは想定していないのである。

かつて経営危機に直面したシャープが2015年に1200億円の資本金を1億円に減資しようと計画したことがあったが、世の中の強い批判を浴びて撤回、資本金を5億円にした例がある。今回は、新型コロナという突然の危機が企業社会全体を襲っていることもあってか、今のところ、あまり強い批判は起きていないように見える。

もともと株式を上場している企業ならば、1億円以下に減資すれば上場廃止になってしまう。そのため、そう簡単には減資に踏み切れない。

毎日新聞やJTBはもともと上場していない。しかし、社会的には大きな存在だ。JTBは大学生の人気就職先として常に上位を占めてきたし、毎日新聞は言論機関として、まさに「社会的存在」であることを自任してきた。それが仮に、税金を払わないために中小企業化するのだとしたら、許される話ではないだろう。

スカイマークは2020年春に再上場を申請していたが、それを取り下げていた。減資は、経営再建に向けて資本増強するためのステップと見ていいだろう。中小企業化は一時的なものということかもしれないが、将来、上場を目指す企業であり続けるならば「中小企業」になることが正しい道なのかは、議論があるだろう。

企業規模の基準が「資本金だけ」というのはおかしい

株式会社は本来、社会的な存在として、大きな責任を負っている。ただ利益を上げるだけでなく、雇用を生み、社会に貢献する責務があるのだ。株主だけでなく、従業員や取引先、顧客など幅広いステークホルダーに貢献するのが社会的存在としての株式会社だ。当然、力に応じて税金を納めるのもその責任のひとつである。

個人会社ならともかく、税金を払わないためにルールの抜け道を使うというのは、それを選択した経営者も失格だろう。昨今は企業の社会的責任が改めて問われる世の中になっている。

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もっとも、日本の税制や会社法制など制度にも問題がある。

まずは、税法が「中小企業」かどうかを判断する基準を資本金においていることだ。

いまやほとんどの人たちは会社の規模を考える時、資本金は見ていないに違いない。売り上げや従業員数などを判断基準にしているだろう。上場企業でも株式を時価で発行して資金調達する方法が当たり前になっており、資本金はあまり意味を持たなくなっている。

機関投資家なども、資本剰余金や利益剰余金を加えた「資本の部」全体がどれぐらいの規模かを注目する。日本企業は内部留保をため込み過ぎだ、と批判されるが、その際に内部留保として見られるのは利益剰余金のことだ。企業規模を測る際には、資本金ではなく、利益剰余金なども加えた資本全体で考えるべきだろう。