「双方向」なら、短時間でも濃密なコミュニケーションが可能

私は、かねてより15分を一つの単位として意識し、仕事の段取りを立てるようにしています。1時間単位で考えると、それが習慣になってしまい、いつのまにか時間効率が低下してしまうからです。15分を一つの単位とする「15分思考」は、限られた時間を効率的に使うためにとても有効です。

顧客とのミーティング(面談)も例外ではありません。もちろん、すべてを15分で終わらせるという意味ではありません。「ミーティングに必要な時間は45分か、60分か、それとも60分超なのか?」と考えることが大切なのです。

ミーティングで重要なのは、時間の長さではなく、コミュニケーションの質です。そして、時間が短くなれば、より密度の濃いコミュニケーションが必要になります。密度を上げるために必須のポイントが、コミュニケーションの「双方向性」です。

たとえば、30分間を「一方通行であるプレゼンテーション」に費やした場合と、同じ30分間を「双方向のQ&A」に使った場合を比べると、ほぼ間違いなくQ&A形式のミーティングのほうが参加者の理解を深めます。

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個人差はありますが、集中力はおおむね10分が限界です。10分程度連続して話を聞いていると、集中力がガクンと低下します。反対に、双方向のコミュニケーションを心がければ、集中力が容易に持続し、これまで1時間かかっていたミーティングが45分、あるいは30分で終わるようになるかもしれません。

時間短縮に必要な「トーキング・ポイント」「FAQ」

ミーティングの所要時間を短縮しようとすると、「複雑な話だから時間がかかる」という理由で反対する人もいるでしょう。「そもそも事態が込み入っていまして……」と言い訳をする人もいるかもしれません。しかし、ミーティングの時間を短くできないのは、ほとんどのケースでスピーカー(話し手)がポイントを絞り込めていないため、洗いざらい話さなくてはならないことが理由です。

どんなに複雑な案件であっても、ポイントを把握していれば、限られた時間内で要領よく話を進めることができるはずです。15分や30分は、意外なほどあっさり削減できるでしょう。「1時間=1単位」の呪縛から解放され、「15分思考」を実践すればいいのです。

ただし、そのためには事前準備が不可欠です。とくに顧客との商談では、それが対面であれリモートであれ、「トーキング・ポイント」と「FAQ」をそろえておくことが大切です。

トーキング・ポイントは、顧客との会話の中で必ず触れるべき重要ポイントのことです。そしてFAQ(よくある質問)は、顧客から出されるであろう質問に対して、あらかじめ回答を用意しておくことです。

これらは、顧客の「質問したい」「相談したい」「交渉したい」という欲求に応えるものであり、双方向のコミュニケーションを成立させるキーともいえます。また、この2つに「アイスブレイク・トピックス」を加えた3つをそろえることができれば万全でしょう。詳しい内容は、拙著『非対面営業の教科書 米国トップ企業での体験から3つの習慣』(大和出版)で紹介していますので、ぜひ参考にしてください。