「誰も私を理解してくれない」と思っていた

【著者デボラ・フェルドマンさんインタビュー】

——この物語に描かれている世界は、日本社会はもちろん、世界のあらゆる文化に置き換えられるものだと感じました。文化や言語を超えて共感を得たことを、どんな風に感じましたか。

驚きました。書いている時には、このような反応が起きるなんて、まったく考えもしませんでした。実際、書き始めた時は、真逆の恐怖と戦っていたんです――「誰も私を理解してくれないんじゃないか」って。誰も私を信じず、私は自分の物語の牢獄の中で孤立したままなんだろうなと。

ところが2012年にアメリカと英語圏のみで売り出されると次々に売れていき、やがてそれがすごい勢いになりました。

当初、アメリカの多くの人たちは、私の物語の中に「アメリカ人的な何かがある」と考えていたことを覚えています。極端にキリスト教徒的なグループや、モルモン教、アーミッシュ、メノナイトといったコミュニティで育って、そこから抜け出した人、もしくは失敗した人の伝記はこれまでもありました。宗教からの逃走はアメリカ的な物語なんです。

というのもアメリカは「信仰の自由」を原則に建国されているから。宗教的な迫害から解放されることができるのです。

ドイツで出版後、各国でベストセラーになった

そんな中、私は2014年にベルリンに引っ越しました。それまでのキャリアから完全に離れて、自分がハッピーに暮らせて、人生を築ける場所を求めて。そして、小規模な独立系のパブリッシャーにカフェで出会って友だちになり、ドイツで本が翻訳されることになりました。少ない部数で本を出版することを決めてくれたんです。それがベストセラーになりました。アメリカでも同じことが起こりました。すごく突然に。

写真=iStock.com/Nikada
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そこでみんな思ったのです、これは他の文化でも、他の国でもいけるんじゃないかと。少しずつ他の国――ポーランド、オランダなどの国々が後に続きました。まあどこも小規模な出版社で小さな部数でしたけれどね。

そんな中、ベルリンで一緒に仕事をしていた友人から、『アンオーソドックス』をTVシリーズにしようというアイディアが出てきたのです。

アンナ(・ウィンガー/脚本)とアレクサ(・カロリンスキー/プロデューサー)が本からシリーズを作りました。そして彼女たちはNetflixに売り込んだのです。