おもしろいなと思ったのは、当時アメリカでさえ、まだ車は二百数十万台しか走っていなかった。それなのに、(トヨタ自動車創業者の)豊田喜一郎さんは年間1割として、日本でも20万台ぐらいは売れる、だから会社を作る、と決めた。今のレベルよりはるかにすごいベンチャー魂だったんでしょうね。
これを読んで初めて知りましたけど、トヨタのトップの人たちは確かに現場を大切にしている。みんな製造現場のたたき上げです。トヨタ生産方式って、ビジネスパーソンなら名前だけは知っているけれど、これは現場の知恵なんですね。現場で通用する、現場ならではの知恵。
トヨタ生産方式で学んだのは「徹底して考えること」
トヨタ生産方式の伝え方で、印象に残ってるのは、「俺たちは知識を伝えるために仕事をしてるんじゃない。考える社員を作るんだ、意識改革なんだ」ということ。
ほんと、その通りなんですよ。僕らもビール造りの素人が集まって、世の中ではあまりやってないような活動をしているのですが、それもスタッフが考えてくれないとできないことです。先日も侃侃諤諤、スタッフと話していて、「そんなこと、どうやったらうまくいくんですか」と聞かれ、「それを探すのが俺たちの仕事なんだよ」と。
僕らの仕事は考えること。誰も答えを教えてくれないし、僕自身もわからない。でも、とにかく考えて新しいことをやって行く。みんなで考え、みんなで意見を出し合って、失敗してもどんどんやっていく。僕らの会社はトヨタには遠く及ばないけれど、でも、考えながら改善していったり、新しいことをひとりひとりが生み出すところが強みだと思うんですよ。意識改革とか、考えることを続けていくことが大事。まさにそうだよなと思いました。
でも、トヨタに比べると徹底具合が足りない。この本を読みながら、トヨタはここまで徹底していくのかと圧倒されました。
じれったくても現場判断に任せる理由
(トヨタ生産方式を体系化した)大野(耐一)さんは「俺が考えられるようなこと考えるんじゃない」と叱るわけでしょう。時代背景もあるんでしょうけれど、みんな苦労されてますね。特に(トヨタ生産方式の現場定着に取り組んだ)生産調査室のチームの方たちは、ほんとによくやってこられたな、と。昭和のたくましさ、その世代の人たちの強い信念、強いタフさを感じました。
私たちの会社では、現場の各チームのメンバーたちに大きく権限を委譲して、彼らがほとんど考えてくれるようなフェーズに入ってきました。ただ難しいことの判断、世の中で初めての試みの場合は、僕も入って議論をすることにしています。それ以外はアドバイスにとどめて、基本的には待つようにしています。