バブル期に資産を守る方法は

——今のようなバブル期に資産を保全するためにどのようにすればよいでしょうか。

資産保全のためのアドバイスとしては、まず自分がよく知っている対象にだけ投資をするべきだ。誰かのお勧め銘柄をよく分からずに勝っても損をするだけだろう。なぜなら次に何をしなければならないか、積み増すタイミングや売るタイミングなどがまったくわからないからだ。

撮影=Luxpho(Takao Hara)
「金と銀なら銀のほうがおすすめ」とジム・ロジャーズ氏。

バブル崩壊に備えて、資産を現金や銀行預金にしておくのもいいと思う。おそらく現金が一番安全だろう。ただし持つなら「正しい現金」を持つべきだ。間違えた通貨を保有していたら、大きな損失を被る可能性が高い。日本円は現時点では悪くないだろう。私が2021年以降、安全だと思っていて保有している通貨は米ドルと人民元だ。米国は借金だらけの国だが、それでも米ドルを保有している理由は、グローバルに経済が失速したとき、投資家は安全資産へ逃避する傾向があり、歴史的に米ドルは安全通貨であるという認識があるからだ。今はそうでもないが、次の景気後退では米ドルが上がるだろう。資金が米ドルに集中し、米ドルは割高、あるいはバブルになってしまうかもしれない。そのときには私は米ドルを売却して、違う通貨を見つけなければいけない。

米ドル以外に私は人民元も保有している。米ドルやユーロのように自由に売買できないが、向こう数年のうちに自由に取引されるようになると予想している。そのとき元は米ドルと競合して世界の基軸通貨の座を狙うだろう。日本円に関しては、最近は円高傾向だが、それは国が円を買い続けているからだ。日本はとてつもない債務国だが日銀はそれでも円を刷り続けている。いずれ日本は大きな問題に直面するだろう。

金や銀を買うのも手

——現金以外にも、有効な資産防衛や投資手段はありますか?

株の空売りに慣れている人は空売りを仕掛けてもよいだろう。そうすれば、株価下落時にも儲けることができる。ポートフォリオを守るためには金や銀を買うべきだ。現時点では銀が金より割安なので、どちらかというと銀のほうがおすすめだ。私は金や銀を保有しているが、どこかでさらに積み増すだろう。

ジム・ロジャーズ『大転換の時代』(プレジデント社)

銀については、私は当面保有し続ける予定でいる。なぜなら向こう10~20年のうちに多くの国は危機的な経済状況に陥り、国の通貨も危険な状況になると考えるからだ。その時には銀は現在の水準よりとても高く取引されるだろう。しかしその過程でバブルにならないことを願う。なぜならその時には私は銀を売らざるを得ないからだ。銀は私が子供に相続できるようにしたいと思っている。

金と銀はすべての投資家が保険として考えて買うべきである。ほとんどの人はなんらかの生命保険や医療保険などの保険に加入しているだろう。一度もその保険を使うことがないことを願うが、必要になったときにあると安心だ。そして最低限の保険を手に入れたら、その後は投資として貴金属を買ってもいいだろう。相場タイミングが上手なら大量に売買すればいいが、最低限、少額でもいいので保険としてポートフォリオに加えるべきだ。

もしトレーディングに自信があるのであれば、銀などの先物を売買することも可能だ。あるいは金や銀を採掘する企業の株を買ってもよいだろう。銀座(田中貴金属など)に行って金や銀のコイン、あるいは金の延べ棒を買うのもよいだろう。このように貴金属に投資をするには様々な方法があるが、知識がない人は能力を超えた取引をする必要はない。

そして、農産物も投資対象としておすすめだ。同じく先物取引ができ、綿や米の先物などもある。ただし、先物取引についてよくわかっていない人はやるべきではない。また、農場を買うのもいいアイディアだと思う。将来、日本で農家を営むことは非常に有益になると考える。なぜなら、現在の農場主は高齢で跡継ぎもいないので、農家は近い将来非常に安く購入できるだろう。ただし、農家の経営ができないのであれば、保有している意味はない。農業関連のインデックス投資のほうが簡単だろう。インデックス投資もわからないという人は銀行に現金を置いておくことを勧める。