品揃えの良さで評判の神戸「六甲古本市」が2月20日から始まる。初日にはプロの古書店やコレクターが行列し、開催期間に400万円売り上げることもある。1998年の開始以降、今年で24回目。売り上げを経済的に困窮することの多い留学生に奨学金としてこれまで総額8465万円支給してきた。地元在住のライター水野さちえさんが古本市発起人の「神戸学生青年センター」理事長、飛田雄一さんに聞いた――。

今年で24回目、神戸の「愛される古本市」の仕組み

「社会の役に立ちたい」という姿勢や活動を示す「ソーシャルグッド」。近年SDGs(持続可能な開発目標)とともに、社会に浸透してきたが、長く続けるにはどうしたらいいのか。そのヒントが神戸で開かれる古本市にあった――。

春が近づくと、神戸市灘区と東灘区向けの新聞には1枚の折り込みチラシが入る。「六甲古本市」のお知らせだ。売り上げが、アジアからの外国人留学生への奨学金に充てられるという趣旨と、古本の品揃えの良さから、2カ月で400万円を売り上げることもある名物古本市である。

運営はボランティアで行われ、1998年の開始以降、延べ145人の留学生に総額8465万円の奨学金を支給してきた。古本市の発起人で世話役の「神戸学生青年センター」理事長、飛田雄一さんに話を聞いた。

資料提供=神戸学生青年センター
今年はいつもより早く、2月から1カ月間の開催

きっかけは1995年の阪神・淡路大震災後の留学生支援

「1995年の阪神・淡路大震災では、近隣の住民だけでなく、阪神間で被災した留学生を支援しました。神戸学生青年センターには宿泊施設もあるので、そこに寝泊まりしてもらいました」

神戸市灘区にある神戸学生青年センター(以下、センター)は、キリスト教伝道団体に由来する公益財団法人で、現在は市民セミナーや語学講座などを運営している。被災した留学生への支援を呼びかけたところ、全国から多額の寄付が集まった。そこで、罹災証明を持参した留学生に、センターから「生活一時金」として3万円を支給したのだ。それが一段落したころ、外資系コンピュータ企業の日本DEC社(当時)から「支援に使ってください」と1000万円もの寄付があった。そこで募金の残額300万円と合わせて、留学生向けの奨学金「六甲奨学基金」を立ち上げた。

撮影=水野さちえ
飛田雄一さん

「これまでもセンターで国際交流セミナーを行っていた日本語学校の先生たちから、『大学への留学生と比べて、日本語学校の学生への奨学金や被災者支援がとても限られている』という話を聞いていました。そこで六甲奨学基金では、広く支援をしていこうと決めました」

当時、来日する学生の在留資格は「大学もしくはこれに準ずる機関(短大、高専、専修)」の学生に対しては「留学」、高校や各種学校の学生に対しては「就学」に区別されており、管轄する省庁も異なっていた。(※2010年7月1日施行の法改正により「留学」に一本化された)