4つ星ホテルのおもてなし

このように感染拡大を防ぐために、隔離者にかなり不自由を強いるオーストラリア。でも柳沢さんが泊まったホテルは、4つ星ホテルで気持ち良く過ごせるようにあれこれ努力をしてくれたそうです。

「到着時に食事のアレルギーの有無や、高タンパク質食を望むかなどを訊いてくれます。私の場合シーフードなどいくつかのアレルギーがあるので、本当に助かりました。いくつかのメニューから選択できるホテルもあったようですが、私のところでは決まったものが出てきました。とはいえ昼食と夕食はステーキのときもあれば、イタリア料理、ギリシャ料理、メキシコ料理、そしててりやきチキンがメインの和食のときもあり、バラエティー豊かな献立で楽しめました。20代後半の男性の私でも、食事の量は十分ですし、ほとんどの場合温かいものが出てきました」

ある日のディナー。バターチキンカレー、チーズとクラッカーが入ったスナック、プリン、ソフトドリンク、水。(写真提供=柳沢大河さん)

とはいえこの食事の内容はホテルによりけり。隔離経験者や隔離中の人、そして隔離予定者によるフェイスブックグループの投稿には「残飯かよ」と憤る投稿も見られたそうです。

「クリーニングは無料で回数も無制限。専用の袋に入れて廊下に出しておくと、3日以内に返ってきます。クリーニングは有料のホテルもあるようですが。一方でホテルの清掃人が部屋に入っての掃除は、感染予防のためにありません。トイレブラシ、除菌スプレー、雑巾などは、フロントに頼めばすべて新品のものを持ってきてもらえました」

食事で出たゴミはレジ袋に入れて口を縛って外に出す。毎回捨てられるのが衛生的(左)。右は洗濯袋。かなり大きめで夏服なら三日分ほど余裕で入る(写真提供=柳沢大河さん)

部屋から出るのはドアから一歩程度

快適なサービスを受けられた一方で柳沢さんは、部屋から出ないようにする監視の目は厳しいものがあったと指摘します。

「許可された者のみ(入館可)。すべてのデリバリーの人はここで待つこと」の看板。晴れて「自由の身」になったときに撮影(写真提供=柳沢大河さん)

「部屋から出ることは、ドアの外に置かれた食事をとるときと、ドアの外に洗濯物やゴミを出すときのみと制限されていました。各フロアには警察が常駐し、部屋から出ないか見まわっていました」

「また私は1人でツインベッドルームでしたが、同じサイズの部屋に家族4人で滞在している人もいて、そういう人たちはストレスもたまるようです。部屋のドアの外から『お金は払うからもう一部屋用意してくれ』とスタッフらしき人に懇願する声も聞こえてきました」

滞在したのはかなり快適な4つ星ホテルですが、部屋での缶詰め状態ですから、かなりストレスがたまります。そのためクイーンズランド州保健省が定期的に電話をかけてきて、精神状態を確認してきたとのこと。

PCR検査は隔離の3日目と10日目に行われた。「医療用のユニフォームにフェイスシールドを着けた看護師と同じくフェイスシールド着用の軍人1名ずつがペアになって各部屋を訪れていました。2度目の検査で無事陰性反応が出れば15日目にあたる日の深夜0時1分から自由の身です」

入国者全員がホテルに隔離され、部屋からも出られないという強い対策をとるオーストラリアです。

写真提供=柳沢大河さん
最後の夜の夕日。ここまで来ると名残惜しい気もしたという。