「熱くなりすぎない=どうでもよい」ではない

気にしすぎるのをやめると、いろんな苦悩が消えます。大事なプレゼンの前に過呼吸になったりしません。仕事のできないチームメイトにいらいらすることもありません。携帯電話をかばんの中にしまって夜のデートを満喫できます。バックパックを背負ってマチュピチュで休暇を過ごしているときにFOMO(Fear of Missing Outの略。自分が知らない話題やイベントなど、取り残されることへの不安からSNSに依存してしまう状態)を感じることもありません。

「仕事に熱くなりすぎない」のは、「仕事はどうでもよい」とは違います。もっと自分を大事にする、という意味です。大切な人と過ごしたり、身体を動かしたり、後ろめたさなしで休みを楽しんだりする時間を増やすことです。人生をふりかえって「あのとき夜10時までオフィスで仕事をすればよかった」などと思う人はまずいないわけで、それを自分に意識させることでもあります。

なぜ仕事にすべてを捧げようとしてしまうのか

問題の根っこは何なのかを知らなくては、仕事のことを気にしすぎるのをやめようと自分に言い聞かせても難しいものです。ではなぜ、私たちは仕事にすべてを捧げる殉教者のようになってしまっているのでしょうか。

リズ・フォスリエン、モリー・ウェスト・ダフィー『のびのび働く技術 成果を出す人の感情の使い方』(早川書房)

1.成功をつかむには、とにかく働き続ける以外にないと考えているから。少しでも離れるとキャリアにさしさわるのではと不安を抱いている。

2.仕事で結果を出してこそ幸せになれるのであって、その逆はないと考えているから。「職場で上の立場につけばいい人生が待っている」「大金を稼げれば、これまでやってきたことがすべて報われる」と自分に言い聞かせている。

ここでは、こうした考えをじっくり検証してみます。そういうものだと信じている人も多いかもしれませんが、いずれも真実というより神話にすぎないとわかっていただけるはずです。ときにはとんでもない時間まで仕事をしたり、四六時中メールを送ってくる上司のもとで働くはめになったりするとしても。