「コバルトを中国に一手に握られていることは各国に致命的」

では、日本にその備えがあるか。EV以外にも再生エネルギーの分野でも脱・炭素社会に向けて取り組む必要がある。

トヨタ自動車グループでは豊田通商がオーストラリアのリチウム資源開発会社と組み、アルゼンチンでリチウムを生産するなど、独自の調達先を確保しているが、「電池の性能を大きく左右するコバルトを中国に一手に握られていることは各国にとって致命的だ」(トヨタ自動車幹部)とされる。

EVだけではない。再生エネルギーの分野でも影響は甚大だ。

2018年に閣議決定されエネルギー基本計画で2030年度の電源構成の中で再エネ比率を22~24%と、2016年度比7~9ポイント引き上げた。鉱物資源の自給率を50%から80%に増やす。今年策定する新たなエネルギー基本計画では再エネの比率はさらに上がる見通しだ。

「鉱物資源の確保以前に風力発電に不可欠な電動機や太陽光発電に必要な太陽光パネルに関して日本市場は中国勢や欧州勢の草刈り場になる」(国内大手電機メーカー幹部)と身構える。

欧州では電源に占める風力の割合が15%

欧州では電源に占める陸上風力も含めた風力の割合が15%だが、日本では1%未満だ。国土は狭いものの、海に囲まれた日本は洋上風力で伸びしろはある。政府も2019年4月に沖合での洋上風力運営を長期間可能とする法律を設け、欧州メーカーが殺到する。

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風力発電機で世界シェア2位のスペイン企業、シーメンスガメサ・リニューアブル・エナジーが参入を虎視眈々と狙う。同社は2021年に台湾で年間100基程度の風車を製造できる部品の組み立て工場を稼働させ、日本を含めたアジア太平洋地区の開拓を急ぐ。

同じくスペイン電力大手のイベルドローラは昨年9月に日本で風力発電事業を手がけるアカシア・リニューアブルズを買収した。デンマークの洋上風力世界最大手、オーステッドは2019年に日本拠点を設け、事業を本格展開している。