鄧小平時代からレアメタル権益を買いあさってきた

レアメタルの一つ、コバルトは生産地がアフリカのコンゴ民主共和国に偏り、その供給網の3分の2を中国がおさえているという。実際、EVの普及を見越して中国がコバルトの買い占めに動き始めている。

ミネラル石コバルト
写真=iStock.com/halock
コバルトカルサイト(コバルト方解石)

英調査会社CRUによると、「中国は昨秋に2000トンを購入したほか、最近、追加で3000トンの備蓄を決めた」とされる。5000万トンは年間生産量の4%程度を占める規模だ。

コバルトの相場も急上昇している。年明けから急速に値上がりし、2020年末比で2割近く高い水準で推移している。

コンゴは政情不安や鉱山での児童労働の問題を抱えている。ユーザー企業の一部にはコバルトに代えて、ニッケルを増やす動きもあるが、電池の発火の恐れを抑え、性能を安定させるにはコバルトが不可欠とする電池メーカーは多い。

コバルトだけでない。故・鄧小平氏はレアメタルを戦略資源と定め、権益を買いあさった。その結果、今では、中国はEVに使うレアアースの80%、リチウムは59%の供給を握る。太陽光パネルではガリウムの94%、風力発電タービンのグラファイトの70%、バナジウムも56%を占めるとされる。

EUは昨年9月に「原材料連合」を組織

中国の買い占め問題に対抗するため欧州連合(EU)は昨年9月に、重要な鉱物資源について「原材料連合」を組織し、独自の供給網をつくることを表明した。安定的な偏西風が吹く欧州は洋上風力を再生エネルギーの主力に据えている。風力に加え、EVの普及に必要なリチウムの欧州域内需要は2050年時点で60倍、コバルトは15倍に増えると予想している。

米国も昨年9月にレアアースの自主調達を促す大統領令を発令し、カリフォルニア州マウンテンパス鉱山での採掘や精製への支援も決めた。さらに豪州とも連携。豪州産のレアメタル鉱石を米テキサス州の工場で処理し、磁石の性能を高めるジスプロシウムなどを取り出す計画を打ち出した。豪ライナスが米社と組み、中国依存を減らそうと躍起だ。

企業レベルでもテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はリチウムを含む粘土鉱床約40平方キロメートル分の権益を米ネバダ州で確保。リチウムの採掘から抽出、輸送までを一貫して手掛けることで資源の安定確保につなげる。