代謝スピードには個人差がある。例えば一合の日本酒を飲んだとき、「水と二酸化炭素」に分解されるまで一晩かかる人もいれば、2時間で代謝できる人もいるということだ。
しかし、いわゆる「下戸」といわれるお酒を飲めないタイプの人でも、劇的に強くなることはないものの、酒を飲むことを繰り返すうちに、飲めるようになっていくという。
「アルコールを分解するもう1つの酵素、肝臓の細胞の中にあるメオス(MEOS/ミクロゾームエタノール酸化酵素)の活性が高まるためです。メオスは飲めば飲むほど鍛えられて、アルコールの分解が早くなります。つまりアセトアルデヒド脱水素酵素を持っていて、かつ働き盛りで飲酒の機会が多い人は、代謝能力がどんどん高くなるということです」(仮屋医師)
自分の代謝能力に合わせた量とスピードを守ることが肝要
だが、たとえアセトアルデヒド脱水素酵素を持っている人でも、ハイスピードで飲めば分解が追いつかない。まずは自分の代謝能力に合わせた量とスピードを守ることが肝要だ。
歩くとよろめく、酔いが醒めたときに「何があったのか」を覚えていない状態は、明らかに飲みすぎだ。
「酒を飲むと、理性を優先する大脳の前頭葉が麻痺します。飲みすぎると運動機能をつかさどる小脳にまで影響が出て、平衡感覚の障害を起こし、“千鳥足”に。今がいつで、どういう状況かを把握できない“もうろう状態”も、酒の影響が小脳に達した意識障害の一種。あまり良い飲み方とはいえません。二日酔いを起こす可能性も高い」(同)
さらに進んだ状態では、「急性アルコール中毒」を起こしてしまう。呼吸や心臓の拍動を管理する、脳の中枢神経まで麻痺してしまうのだ。
そうならないためには、飲むスピードとともに、空きっ腹で飲まないことも大切。空腹での飲酒は、悪酔いしやすいうえ、胃腸がアルコールに直接さらされると粘膜が傷つけられてしまう。翌日の消化器系の不調にもつながるだろう。管理栄養士の望月理恵子氏は“酒の肴”に「枝豆や豆腐」を勧める。
「糖分が多いアルコールを摂取するほど、体内のビタミンが失われます。枝豆や豆腐はビタミンに加えタンパク質も豊富で、肝細胞の再生を促進します。刺し身や貝類も◎です」
飲んでいる最中や翌日に気分が悪くなったら、その時点からとにかく「水」を飲もう。酒そのものは水分だが、実は脱水を誘発する。アルコールが体内の水分調整をする「抗利尿ホルモン」の活動を抑制すると考えられ、必要以上に尿を排出してしまうのだ。これが原因で、頭痛などの不調につながったり、脱水による倦怠感や疲労感で体が重くなったりする。水だけでなく、アルコールの分解を早める作用のあるトマトジュースを飲んでもよい。