鉄が不足して体のいたるところが酸欠状態に

貧血の原因の9割は鉄が足りない、鉄欠乏です。女性は初潮から閉経までの約40年、月経で鉄を失うため、自覚症状はなくても貧血の人が多いのです(隠れ貧血)。失う分を上回る量を食事で補給するのが理想ですが、成人女性の1日の鉄の摂取推奨量が10.5~11mg〔*「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より 成人女性(月経あり)の場合〕であるのに対して、現状は平均で6.8〜7.3mgしかとれていません(*「平成30年国民健康・栄養調査」より)。こうして体内で鉄の負債が少しずつふくらみ、鉄欠乏の症状が出始めます。特に、月経が終わった直後2日ほどは症状がきつい傾向にあります。

鉄は血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの材料になります。ヘモグロビンは体中に酸素を届ける運送屋なので、鉄が不足してヘモグロビンが減ると、全身が酸欠状態に陥ります。脳が酸欠になると、ぼ~っとしたりやる気が出なかったり。筋肉や肝臓に酸素が行き届かないと、疲れの回復に時間がかかり、常にだるさを感じるようになります。また、鉄はコラーゲンの生成にも欠かせないため、肌荒れや抜け毛など、美容面にも影響します。

食生活では、菜食主義やマクロビ食を好む人は、肉をとらないため、鉄不足になりがちです。また、ダイエットや筋トレに励む人は、肉を食べていても、鶏胸肉やささ身が中心だと、鉄欠乏に陥っているかもしれません。鶏肉は優秀なたんぱく質源ですが、鉄はほとんど含まれていないため、ヘモグロビンの材料にはなりにくいのです。激しい運動を行う人も、汗とともに鉄が体外に排出されてしまうので、要注意! 鉄もたっぷりで、筋肉の材料にもなる赤身の肉や魚をしっかりとることをおすすめします。

写真=iStock.com/cafotodigital
※写真はイメージです

こんな生活をしている人は要注意

下記3点に心当たりがある人は要注意です。

①月経の出血量が多い(かたまりが出ることがある)
②肉や魚をあまり食べず、野菜中心の食事をしている
③ランニングなど、激しい運動を日常的に行う

経血量が多い場合は、失う鉄の量もふえます。また、ヘモグロビンの合成にはたんぱく質が必要なため、肉や魚の摂取が少ないと、貧血症状は改善されません。運動時に流す汗でも鉄を失うので、激しい運動をする人は意識して補給を。