居酒屋以外にも適応できる「おかわりビジネス」

この構造と同じ別のものを考えます。私はプリンター本体とインクの関係に似ていると思いました。プリンター本体だけで儲けるのではなく、継続的に必要になるインクで儲けているビジネスモデルはあまりに有名です。売るものとしては2種類ある。儲けの大小がはっきりしている。おかわり(継続的な注文)で儲ける。まさに居酒屋のビジネス構造に似ています。

もしあなたがビジネスパーソンなら、このような思考を使って「自分の会社においてこの構造でビジネスができないだろうか?」と考えたりするでしょう。構造化して似ているものを見つける。とても大事なことだと思いませんか。

最後にここでの思考プロセスを整理します。まずは「塊」を明らかにし、そしてそれぞれの「特徴」を整理しました。ある事物について「こうなっていますよ」と説明するために有効です。これも構造化のコツと申し上げてよいでしょう。

なぜ稲盛和夫の名言は心を打つのか

【演習問題】
稲盛和夫氏の次の言葉がなぜ名言なのか、「構造」という観点から考えてみてください。

「バカな奴は単純なことを複雑に考える。普通の奴は複雑なことを複雑に考える。賢い奴は複雑なことを単純に考える」

個人的にも好きな言葉です。多くの方が「まさにその通り!」と膝を打つ名言ではないでしょうか。

さっそくこの名言を構造化してみましょう(図表1を参照)。まずは「塊」で捉え、それらの位置を定めます。これは前項で申し上げた、特徴を整理している行為に他なりません。

こうしてみると、「バカ」と「賢い」という真逆の概念を対比構造で表現し、だから真逆なのだとシンプルに説明してくれているように思えます。シンプルな構造なのに本質を、「こうなっていますよ」と説明してくれている。この名言の魅力はそんなところにあるように思います。

余談ですが、私はこのような「シンプルだけれども本質をついている構造」のものを見ると、つい「美しい」と表現してしまいます。一般的に数学者も、シンプルなのに本質を表現している数式ほど「美しい」と評価します。もしあなたにもその感覚があるとしたら、あなたは数学者の感性や彼らに見えている景色がほんの少しだけ理解できたことになります。