金融市場にあふれた資金は、価格上昇や成長が期待される資産や分野(企業、産業)に向かう。韓国では実体経済ではなくソウルなどの住宅市場に資金が流入した。韓国では少子化、高齢化、人口の減少が深刻だ。2019年の合計特殊出生率(女性一人が生涯に産む子供の数)は0.92と2018年(0.98)から低下した。

ソウル圏にどんどん人口が集中している

人口減少によって経済の縮小均衡懸念が高まる中、より良い選択の機会を目指して政治と経済の中心地であるソウルなど首都圏に人口が集中した。それが住宅需要を押し上げた。朴槿恵(パク・クネ)前政権による住宅ローンの貸し出し規制緩和などもその一助となった。

カネ余りと需要拡大に支えられ、首都圏のマンション価格上昇への期待は高まった。それが投機熱を高め、価格が高騰した。韓国のKB国民銀行が公表している住宅価格データを見ると、2017年5月から2020年末の間、ソウルのマンション価格は38.4%上昇した。

文政権はローン審査の厳格化をはじめ20数回にわたって規制を強化し、不動産価格の上昇を抑えようとしたが効果は出ていない。それだけ、資金はだぶつき、価格上昇への期待も強い。住宅価格の上昇は投機や日常生活のための借り入れ増加につながり、韓国の家計債務残高はGDPの100%を超えた。経済成長率を上回るペースで不動産価格が上昇し、債務残高が増加する状況は持続可能ではない。

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雇用悪化の背景にある「強力な労働組合」

それに加えて、若年層の失業率の高さも韓国経済の懸念材料だ。2020年12月の韓国の失業率は4.1%(季節調整値は4.6%)と前月から上昇した。世代別の失業率を見ると15~29歳の失業率が8.1%と高い。

その背景には、労働組合の影響力の強さがある。韓国の労働組合は恒常的に経営者に賃上げなどを求め、受け入れられなければストライキを実行することで知られる。

特に、自動車業界の労働組合の力は強い。昨年12月に韓国の自動車メーカーである双竜自動車が資金繰りに行き詰まり、裁判所に更生手続きを申請した。その要因の一つは、労働組合が経営者との協力よりも、賃上げなどの待遇改善を求め続けた結果、新しい車種の開発が進まず収益力が低下したことがある。政府系金融機関である韓国産業銀行は、双竜自動車に対して労働争議が起きる場合には一切の資金支援を行わないとの立場を示している。