朝日社説は「場当たり的な対応で急拡大させた末の切り札」と批判

1月8日付の朝日新聞の社説はさらに手厳しい。書き出しからこう批判する。

「感染抑止に軸足を移すことをためらい、場当たり的な対応で感染者を急拡大させた末の『切り札』である。菅首相は危機的状況を招いた政治責任を厳しく受け止め、今度こそ、国民のいのちと暮らしを守る責務を果たさねばならない」

朝日社説は「場当たり的な対応」と指摘するが、一連の「Go Toキャンペーン」のことを指しているのだろうか、よく分からない。読者に不親切だ。何がどう場当たり的なのかを具体的に示すべきである。

「危機的状況」とも書くが、欧米の爆発的な感染拡大に比べれば、日本の感染状況はまだましだ。たとえば、米ジョンズ・ホプキンス大学のデータによると、今年1月1日時点の「人口100万人あたりの感染死者数」は、ベルギーが1689.5と最多で、これにイギリス(1093.6)、アメリカ(1050.7)、フランス(994.2)など欧米諸国が続く。世界の平均が234.5で、日本は26.4とベルギーの60分の1以下だ。

「自粛警察」「マスク警察」といった言葉は、なぜ出てきたのか

朝日社説はさらに指摘する。

「前回の宣言の際は、国民に対し、他人との接触を最低でも7割、できれば8割減らす努力を求め、百貨店や映画館など幅広い施設に休業を求めた。今回は感染リスクが高いとされる飲食店の時短強化に的を絞りつつ、テレワークの推進や大規模イベントの入場制限なども行う」
「経済社会への影響をなるべく抑えたいという意図が明らかだが、これほど市中に感染が広がってしまった後で、どれだけ実効性をあげられるか、確たる見通しは持てない」

朝日社説と反対に、沙鴎一歩は菅政権が強調する「飲食店への絞り込み」には賛成である。防疫は社会・経済の活動とのバランスが欠かせないからだ。

感染防止の対策だけに重点が置かれると、人の心も病んでいく。コロナ禍のなかで挙げられた「自粛警察」「マスク警察」といった言葉がそれを端的に示している。医師や看護師など医療従事者に対する誹謗中傷も私たちの心が疲れて折れた結果だろう。

いま重要なことは「あらゆる地域に緊急事態宣言を出すこと」ではなく、「対象地域がいち早く緊急事態を脱すること」である。やるべきことは明確だ。防疫には一人ひとりの協力が欠かせない。そして政府は、この間に病院間連携の強化などの施策を推し進めてほしい。明けない夜はない。

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