雇用調整助成金は枯渇寸前、雇用保険積立金も4兆5000億→1722億円に

もちろん大企業も受け取っている。特例措置が始まった2020年4月から11月までに雇調金を計上または申請した上場企業は3826社中599社(15.6%)、金額は2414億5420万円に上る(東京商工リサーチ調査)。

業種別では小売業の33.9%が計上・申請し、次いで運送業の33.0%、サービス業21.9%、製造業15.9%となっている。

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つまり雇調金でかろうじて雇用が守られている形だが、特例措置は2021年2月末で終了し、段階的に縮小していく予定だった。そうなると企業が一挙に解雇に踏み切る可能性もある。そこで今回、政府は緊急事態宣言の再発出で特例措置の延長の検討に入った。しかし、そこには大きな問題がある。

雇調金の財源は枯渇しつつあるのだ。

雇調金の主な財源は、企業と従業員が負担する保険料だ。本来の雇調金は使用者のみ負担する保険料で賄われていたが、それだけでは足りないので失業給付や育児休業給付などに使う労使折半の雇用保険料の積立金から1兆7000億円を借り入れている。それと一般会計から1兆4000億円を繰り入れ、合わせて3兆3000億円の予算を確保している。

ところが前述したように12月25日時点で支給額は2兆5000億円に達し、2度目の緊急事態宣言が出た今、すぐ底をつくのは明らかだ。

それだけではなく雇用保険の積立金自体も2019年度末に4兆5000億円あった残高が失業給付や雇調金の借り入れで21年度末は1722億円に減ると厚労省は試算している。実に96%以上が消えることになるのだ。

雇調金の特例措置が延長されても、リストラに踏み切らない保証はない

すでに財源は、雇用を維持する休業手当にとどまらず、失職後の失業給付まで虫食い状態にある。財源がない中で雇調金の特例措置を延長するとなると、どうなるか。企業と従業員が負担する雇用保険料を値上げするか、財政投入するしかない。まさに切羽詰まった状況となる。

企業で働く人々を絶望的にさせるのは、雇調金の特例措置が仮に延長されても、企業がリストラに踏み切らない保証はないということである。

従業員の給与だけを国が面倒をみても売り上げが下がれば企業の体力は徐々に低下していく。そうなると倒産回避のリストラは避けられないだろう。

労働政策研究・研修機構の「新型コロナウイルス感染症が企業経営に及ぼす影響に関する調査」(2020年10月5日~15日調査、12月16日発表)によると、2020年9月末の企業における労働者の過不足状況は、「過剰」と「やや過剰」の企業が23.1%だった。

なぜ、過剰な従業員を抱えているのか。

その理由では「将来的に人手不足が見込まれるため」(17.0%)が最も多く、次いで「社員のため(解雇すると従業員が路頭に迷うことになるから)」(13.7%)、「雇用維持は企業の社会的責任だから」(13.6%)の順である。

余剰人員を抱えても雇用を守り抜くという姿勢が伝わるが、それも限界がある。「現在の生産・売上額の水準が今後も継続する場合に現状の雇用を維持できる期間」を尋ねると「1年ぐらい」が15.6%、「半年ぐらい」11.9%、「2年ぐらい」5.8%、「2~3カ月ぐらい」4.3%、「すでに雇用削減を実施している」1.8%だった。