日増しに明らかになっているドイツの失敗
日本はエネルギー貧国であるがゆえ、すでに1970年代より誰に言われなくても省エネに尽力してきた。今や、石炭火力の燃料効率は抜群だし、水素を燃料とする燃料電池の研究開発も世界一進んでいる。また、排出したCO2を分離・回収し、あるいはコンクリートの原料の一部や、燃料として再利用する技術など、最先端のところでしのぎを削っているのだ。
それに比して、日本のメディアがいまだに優等生のように報じているドイツでは、エネルギー政策の失敗が日増しに明らかになっている。2020年、ドイツが京都議定書で定めた温室効果ガスの1990年比の削減目標をギリギリで達成できたのは、ひとえにパンデミックで経済が停滞したおかげだ。そして、家庭用電気の料金はEUで一番高くなってしまった。
※編集部註:初出時、<(ドイツは、「たとえコロナがなくても達成できた」と言っている)>という記述がありましたが、不正確だったため削除します。(1月18日10時15分追記)
また、2022年末にすべての原発を止める予定だが、その代替電源の見込みも立っていない。最大電力需要の1.4倍もの再エネの設備があるものの、太陽も風もない時には、何か他の電源が要る。今はまだ火力があるからどうにかなるが、ただ、CO2フリーの原発の代わりに火力を投入すれば、CO2は減らない。
しかも、現在のドイツの目標では、2038年にはその火力も止め、2050年にはカーボンニュートラルを達成! ということになっている。現実味はないものの、意欲的な目標だ。そして、日本人はそれを聞いて恐れ入り、無責任なメディアが、ドイツを見習えと発破をかける。
「EUと中国、温暖化対策主導」という報道はブラックジョーク
ところが米国は日本とは違い、ドイツを見習わないばかりか、ドナルド・トランプ大統領がパリ協定からの離脱を宣言した。COPはお金がかかるばかりで、環境のためには役に立たない。CO2は温暖化の原因ではなく、そもそも、人間が原因の温暖化が起こっているかどうかさえわからないというのがトランプ大統領の考えだ。
トランプ大統領と同じく、CO2を減らしても地球の温度は下がらないと考える学者は、実は多い。例えばキヤノングローバル戦略研究所の研究主幹、杉山大志氏によれば、猛暑も豪雨も山火事も温暖化のせいではないし、台風は今も増えておらず、シロクマは減っていない。しかも、2050年にCO2をゼロにしても、気温は0.01℃も下がらず、豪雨は1mmも減らないだろうとの予測だ。
しかしながら、ドイツはトランプ大統領の抜け駆けに怒った。そこで手を組んだのが、なぜかCO2排出量トップの中国。2017年、ドイツのアンゲラ・メルケル首相と中国の李克強首相の共同記者会見では、「われわれは国際的な責任を担う」(李克強首相)、「(神の)創造物を守るためにパリ協定が必要」(メルケル首相)と勇ましかった。
そして、それをメディアが、「EUと中国、温暖化対策主導」と伝えたのは、結構きついブラックジョークだった。
ちなみにこの2国の共通点は、自分たちのすることを“世界平和”や“惑星の未来”といった遠大な構想として世界に発信できるところだ。その実、多くは投資目的なのだが、そんなことはおくびにも出さない。日本人にはとてもまねができない。