日本の代表的インデックスの盲点

企業価値はその企業が将来にわたって紡ぎ出す「利益」の現在価値の総額です。株価は中短期的には市場における需給や相場変動に左右されますが、長期的には必ず企業価値を反映します。

つまり、長期的に株価が上がる企業とは、長期的に企業価値が増大する企業であり、その企業の競争優位性、成長性を背景として、将来的に利益額を持続的に増大させることのできる企業なのです。

その観点で日本の代表的なインデックスであるTOPIXの構成企業を見てみましょう。みなさんはTOPIXというインデックスの仕組みを知っていますか?

これは東証一部に上場している全ての企業が「自動的に」含まれる世にも不思議なインデックスです。そもそもTOPIXの公表が始まった1968年当時、このインデックスは文字通り日本株式市場全体を表象する経済指標として作られたに過ぎず、パッシブ運用の投資対象ではなかったことに起因するのでしょう。

その当時、パッシブ運用そのものが日本には存在しなかったのです。

イラスト=iStock.com/jesadaphorn
※イラストはイメージです

TOPIXは「選ばれている」企業群ではない

「世にも不思議な」と言ったのは、他国の代表的なインデックスはS&P500にしてもDAX(ドイツ株価指数)にしても、上場している企業群の中から業種、時価総額、市場での流動性などのなんらかの基準により「選ばれている」ものだからです。

その点TOPIXは、一度東証一部に上場してしまうと、上場廃止になるとか二部への指定替えなどがない限りはインデックスの中に残り続けます。

日本では企業を倒産させずに保護する傾向が強く、東証の上場廃止基準も極めて緩やかに運用されていることもあり、結果としてTOPIXにはダイナミズムが働きにくく、今では2200社近くもの企業が含まれています。

その時価総額平均値は3,040億円、中央値は432億円です。米国の小型株も含む代表的インデックスであるS&P1500の時価総額平均値25,172億円、中央値4,108億円と比べると、完全に小型株インデックスといっても過言ではありません。

出所=Bloombergデータ基にNVIC作成、2020年12月22日時点

東証一部上場企業全てが自動的に含まれる、というこのTOPIXの特性は、インデックス及びその構成企業のダイナミズムを著しく損ないます。

いったん東証一部に入ってしまえば、パッシブ運用隆盛の現在において機関投資家の8割以上を占めるともいわれるパッシブ投資家の投資対象として安泰の地位を手に入れることになり、株主からの企業価値増大プレッシャーから開放されるからです。

TOPIXは長期投資家にとって望ましいとは言えない

結果として、TOPIXに含まれている2,200社もの企業群の中には、企業価値増大にプライオリティを置かないような企業が相当数含まれているように思います。

だからこそ、時価総額が数十~数百億円のまま成長しない企業(株式市場では「小型」企業です)が多数存在していますし、上場時点が時価総額のピークという企業も散見されます。