世界的な低金利で厚み増した株式運用
この点、低金利は世界的現象ゆえ、類似の動きはGPIFに限ったことではなく、利回りを要求されている世界中の機関投資家の間で起きていると考えるのが自然である。事実、そのように株式運用を厚くするような運用方針の修正抜きに、結果は出せなかったはずである。
こうした年金基金に代表される長期性の運用資金の動きと冒頭で紹介したバフェット指標の上昇基調の間に何の関係もないということは考えにくい。特に年金基金のようなプレーヤーは短期的な市場動向を受けて資産構成割合を変更することをしない。
決めたられた基本ポートフォリオ構成に沿って淡々と運用を進めていくだけであり、突発的な感染症の拡大・縮小に合わせて売買することはしない。「株価と実体経済の乖離」を引き起こす張本人となる可能性は非常に高いように思える。
もちろん、基本ポートフォリオを定めてそれを長期間維持していくことが長期的に見れば効率的かつ理想的な結果をもたらすというのは理論的にも正しい考え方である。
金利上昇に伴い大幅な調整はある
以上のような認識の下、2021年も基本的には株価の騰勢は続くと考えるが、金利動向に応じた大幅な調整には構えておくべきであろう。上述してきたように、実体経済から乖離した株高の根幹に金利の低位安定があるのだとすれば、その上昇は相当嫌気される筋合いにある。
実際、前回、FRBが正常化を進める過程では10年金利が節目(例えば3.0%台など)に差し掛かるたびに大きな調整を迎えた。まして、現状のように実体経済の改善に全くフォローされない「砂上の楼閣」のごとき株高であれば、その不安は強い。
経験則に倣えば、株高に伴い株式保有割合が高い米国家計部門のマインドは改善するはずなのだが、現在は腰折れたままだ(図表4、恐らくこの背景には壊滅的な雇用・賃金情勢があると考えられるが、この点に係る議論は紙幅の関係上、今回割愛させていただく)。株高が低金利一本足打法となっている印象はかなり強い。
筆者は2021年、米金利はある程度は上がると考えている。もちろん、2021年中にFRBが正常化プロセスに着手することはあり得ないだろう。だが、景気情勢が「今」と「来春」で改善しないということもあり得ないはずである。インフレ期待(10年ブレークイーブンインフレ率、BEI、図表5)が既にコロナ以前の水準を視野に捉えているのは、そうした未来を見据えているのだろう。
「市井の人々が予想するインフレ率が上昇すると名目金利も上昇する」というフィッシャー効果も踏まえれば、今後、米10年金利も徐々に浮揚してくることが想定される。その時の株価はひとまず試練を迎えるはずだ。大幅な調整が断続的に入る中で「いよいよバブルがはじけたか」という懸念が話題になる時間帯も恐らくあるのだろう。