足元の経済が冷え込む一方、世界的な株高が続いている。なぜこうした乖離が生じるのか。みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏は「低金利が続き、日本の年金基金だけでなく世界中のファンドが株式運用の比率を高めざるを得ない状況にある。『皆さんも買っていると思います』というのはさほど的外れではない」という――。
米国の株式時価総額は米経済の2倍に
「一体、誰が株を買っているのか」。2020年下半期で筆者が頻繁に受けた照会の1つである。恐らく2020年ほど「株価と実体経済の乖離」が注目を集めた年はないだろう。そして2021年を展望する上でも、その傾向が継続するのかどうかが、株式市場に限らず、その他資産市場にとっても重要なポイントだと考えられる。
株価と実体経済の乖離を掴む方法はいくつか考えられるが、一番わかりやすいのは名目GDPに対する株式時価総額の比率、いわゆるバフェット指標を見ることだろう。図表1に示されるように、米国ではニューヨーク証券取引所(NYSE)とナスダック総合指数(NASDAQ)の合計時価総額が米国の名目GDP(約21兆ドル)の2倍近くにまで膨らんでいる。これまでにない水準である。
「実体経済との乖離」は12年前から始まっている
もちろん、株価はストックデータ、GDPはフローデータなので、この比率を取ること自体に議論の余地はある。だが、「今までになかったこと」が起きているのは事実だ。同時に、バフェット指標の上昇基調が今に始まったものではなく、リーマンショック直後から始まった動きであることも無視できない。
図表1で見るように、この傾向は米国だけではなく世界的に見てもそうだし、成長率が劣後する日本もそうだった。リーマンショックから12年の月日が経っている。とすれば、「過去12年に共通する何か」が株価の騰勢に寄与していると考えられる。その「何か」とはほぼ間違いなく「低金利」だろう。これは「金利(割引率)が低ければ、理論的な株価は高くなる」という事実は元より、「世界から金利が消滅したことで運用難が極まり、結果として株価が高くなった」という表現の方が正確に思える。