ただ12月に始まった新型コロナワクチンの接種では、イギリスで2人、アメリカで6人の医療従事者が激しいアレルギー症状であるアナフィラキシー反応を示しました(12月20日現在)。8人のうちイギリスの2人とアメリカの1人は、過去にアレルギー症状が出たことがあるものの、ほかの5人はこれまで出たことはなかったとのことです。

まだ原因は解明されていませんが、mRNAそのものの免疫を活性化する作用が関わっている可能性は否定できません。

このアナフィラキシーの頻度は、他のワクチンに比べて10倍以上高いものです。まだ接種が始まったばかりなので、これからも同様の傾向が続くのかはわかりませんが、mRNAワクチンを接種する場合は、免疫の過剰反応には十分気をつける必要があります。少なくともアナフィラキシーショックなどに対処できる体制を整えたうえで接種をおこなうべきでしょう。

過剰な期待を持たず、これまで通りの感染対策の徹底を

これまで発表されているファイザー社およびモデルナ社のmRNAワクチン、そしてアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンの効果は、期待を大きく上回るものです。ただいずれのワクチンもこれまでにない種類のものであり、どのようなメカニズムで発症を抑制しているのか、長期的な副反応は大丈夫かといったことは、まだわかっていません。

小林弘幸著、玉谷卓也監修『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)

新型コロナによる死亡者が30万人を超えているアメリカや6万人を超えているイギリスでは、これ以上の感染拡大を防ぐためには、ワクチンに頼らざるを得ない状況になっています。ワープ・スピードでのワクチン承認は、致し方ないと言えるでしょう。

臨床試験でワクチンを接種して強い副作用が出た方自身も、新型コロナに感染するリスクを減らせるのであれば、ワクチンを打つべきだといっています。

一方、幸いなことに日本では、新型コロナによる死亡者数は、アメリカの数十分の1に留まっています。ワクチン接種のメリットが副反応のリスクを上回るのかについては、十分見極める必要があります。

日本でワクチンが接種できるようになるのは来春以降になりますが、それまでに十分に先行国のデータを解析して、安心してワクチンを接種できる体制が整ったか判断したうえで、接種するか決めても遅くないでしょう。

それまでは、これまで通り、新型コロナの感染対策である、マスクの着用、3密を避ける、うがい手洗いの徹底を心がけましょう。適切な新型コロナ対策のためには、自分がどれだけの重症化リスクを抱えているかを検査によって知り(筆者プロフィールにリンクあり)、リスクの高い人は特に感染予防を心がけ、感染してしまった場合はすぐに治療を開始するようにすることが有効です。

<参考文献>
1)Science. 2020; 370: 1227.
2)横浜市立大学:新型コロナウイルス感染症回復者のほとんどが、6カ月後も抗ウイルス抗体および中和抗体を保有していることが明らかに
3)Cell. 2020; 183: 1496.
4)Clin Infect Dis. 2020 Aug 25;ciaa1275.
5)Nat Med. 2020; 26: 1691.
6)Nature. 2020; 588: 205.
7) Immunity. 2020; 53: 1281.
8) JAMA. 2020; 324: 1.

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