ワクチン接種の主目的は「抗体」を作ること

そもそも「ワクチン」とはなんでしょうか?

みなさんがワクチンに期待するイメージのとおり、一般のワクチンは「二度とそのウイルスに感染・発症しない身体」をつくるために接種します。

弱毒化したウイルスやウイルスの一部をリスクの少ないかたちで身体に取り込み、ウイルス感染と同じ状況をつくり出すことで免疫応答を起こし、B細胞(免疫細胞の一種)に抗体を産生させることが目的です。

抗体は、感染・発症中にウイルスを撃退するだけでなく、その後も抗体を作るB細胞が身体のなかに残り続け、次にウイルスが侵入した際に、すぐに抗体を大量に作ることによって、未然に撃退する「感染予防」の役割も果たします。

例えば、おたふく風邪や麻疹はしかのワクチンは、いちど接種して抗体ができれば、ほとんど一生、身体のなかに抗体を作るB細胞が残り続け、再び同じウイルスが侵入したら感染を阻止するために働いてくれます。

このように、ワクチンは、免疫システムに抗体をつくらせて、ウイルスの感染を未然に防ぐためのものです。

そのため、新型コロナのパンデミックが起こった当初は、「抗体をつくることで新型コロナの感染を予防できるワクチン」の開発がこのパンデミックを抜け出すことにつながると考えられてきました。

しかし、次第にワクチンだけでは解決が困難である可能性が見えてきたのです。

武漢コロナウイルスの画像を持つ研究科学者
写真=iStock.com/JHDT Stock Images LLC
※写真はイメージです

新型コロナウイルスにはワクチンが効かないのか

世界中で新型コロナウイルス感染者の臨床が行われるなかで、他のウイルス性疾患とは異なる、奇妙な現象が確認されました。

重症化した患者ほど、体内の抗体量が高まっている。

本来、抗体が多いのなら、それだけウイルスを撃退しているはずなのに、実際は重症化している。それはつまり、「抗体は新型コロナウイルスからの回復にあまり寄与していない」という可能性を示唆しています。

さらに、判明した意外な事実はそれだけではありませんでした。

新型コロナに対する抗体については、アメリカで3万人以上の新型コロナ感染者を対象にした大規模研究から、ほとんどの患者で抗体の産生が確認され、少なくとも5カ月間は十分な量の抗体が存在し続けることや(1)、日本からも感染後6カ月でも98%の人が新型コロナに対する抗体を保有していることが報告されています(2)

一方、感染者がどのような種類の抗体を持っているかを詳細に解析した研究では、抗体が急速に減ってしまう場合や数カ月以上大量の抗体を持ち続ける場合など、人によってさまざまであることも明らかになったのです(3)

このような結果から、新型コロナに感染した場合やワクチンを接種した場合、最初の半年程度は十分な抗体が産生される可能性がありますが、その後どのくらいの期間抗体を持ち続けるかは人によって異なってくるようです。

抗体は本来、回復後も体内に残り続けることで次の感染を防いでくれます。それが消えてしまうケースがあるということは、残念ながらこう言わざるを得ません。

「ワクチンで抗体をつくっても感染予防に寄与しない」可能性がある。