新型コロナは「再感染」する

これを裏付ける事実として、いちど新型コロナに感染した人が、数カ月後に再度感染したという事例が出始めているのです。再感染は、1回目の感染でできた抗体が減ってしまうことにより起きていると考えられます。

今年8月、香港の30代男性が新型コロナに再感染したというニュースが、世界中を駆け巡りました(4)。それ以降も再感染の報告は増え続け、確実に再感染だと思われる事例だけでも数百件を超えています。また再感染しても、無症状のため気づかなかったということも多いと考えられることから、かなりの再感染者がいる、すなわち再感染はそれほど特別なことではないと思われるのです。

コロナウイルスの再感染について、興味深い報告があります。新型コロナではないのですが、4種類の季節性コロナウイルスについて、35年にわたって再感染を調べた研究が発表されました(5)。それによると、再感染は最初の感染から6カ月くらいから確認され始め、12カ月では頻繁に発生していたということです。

いまのところ新型コロナウイルスと季節性コロナウイルスでは、免疫の働きを長引かせるような違いが確認されていないことから、新型コロナでも同様の傾向を示す可能性が高いと考えられています。

欧米での感染拡大が始まってからまだ1年、ワクチンについては臨床試験で最も早く2回目の接種をした人でも、まだ4、5カ月しか経過していません。このことから再感染がどの程度発生するかについては、十分に注視していく必要があります。

さらに新型コロナウイルスは、インフルエンザウイルスと同じように変化しやすいという特徴があります。そのため新型コロナにいちど罹って抗体ができても、時間がたつとウイルスが変化してしまい、その抗体が効かなくなる可能性があるのです。

インフルエンザの予防接種を毎年受けるのと同じように、新型コロナのワクチンも何度も受ける必要があるかもしれません。

マスクをした人たち
写真=iStock.com/gyro
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ワクチンの感染予防効果は未知数

今回のワクチン開発のニュースでは、「新型コロナの感染予防効果が90%以上あった」といった表現が使われていますが、これは正確ではありません。臨床研究でみているのは、新型コロナを発症した人の数で、感染した人の数ではないのです。

何を細かいことをと思われるかもしれませんが、「感染」と「発症」には大きな違いがあります。新型コロナでは、特に若い人では感染しても無症状の場合が多いことからおわかりのように、感染したからといって必ずしも発症するわけではないのです。

ワクチンを接種すれば発症しなくなるなら、それでいいではないかという意見もありますが、事はそれほど単純ではありません。

新型コロナでは、インフルエンザとは違って無症状でも人に感染させてしまいます。ワクチンによって無症状の感染者が増えると、重症化リスクのある人の感染リスクを高めてしまう可能性があるのです(6)

では感染予防効果があることを確認すればいいということになりますが、そのためにはワクチンを接種した多くの人について、何回もPCR検査を行って、感染していないことを確かめる必要があります。これには多大な労力と時間が必要で、当分結論が出そうにありません。