業務負担の削減は、より良い保育につながる

余談になりますが、当時は保育関連の用品を購入するのでも、アマゾンや楽天などを使ってeコマースで購入しようものなら、「保育とは、そういうものではない」という意見がありました。つまり、代理店の顔を見ながら、商品を吟味して購入するべきということだったのでしょう。

たしかに、そのような考え方も重要です。園児のことを考えれば考えるほど、物事の判断に慎重さが求められるのも事実です。ただ一方で、より良い保育サービスを提供するために、保育士の業務負担を削減することも必要ではないでしょうか。

センス(感覚)で行う保育も大切ですが、園児と直接的に接しない部分、それこそ記録や入力、購買などの事務作業を省力化することは大切です。それがすなわち、日進月歩で進化していくテクノロジーを活用した、これからの保育につながっていくはずです。

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「ヒヤリ・ハット」事例はデータ化すれば予防しやすい

また、保育業界に参入してみてわかったことですが、園長をはじめとするマネジメント層のパソコンに対するアレルギー、つまりITリテラシーの遅れも顕著でした。そのような保育園では、アナログで業務を進めていくことが当然であり、合理化や生産性向上を図ろうとする意識はほぼ見られませんでした。

アナログの良さは、「PCやタブレットなどのデバイスが不要なこと」と「目で読みやすいこと」です。一方、データの良さは「メールで転送が容易なこと」と「解析や分析が容易にできること」です。

たとえば、いわゆる「ヒヤリ・ハット(事故にはならなかったものの、そのような可能性のある「ヒヤリ」「ハッ」とした事例)」を手書きで記録していても、過去の情報を集約して、いつ、どこで、どのような危険が多かったのかを分析することは容易ではありません。

一方、データであれば、ボタンひとつで、いつ、どこで、どのような危険が多く発生し、誰が最も危険に気づいてくれたのかさえも、数秒でグラフを作成して理解することができます。また、園内での共有も容易です。

せっかく手で書いた「ヒヤリ・ハット」を、このように分析して活用している保育園はかなり少ないと思いますし、分析して対策を打たないのであれば、「ヒヤリ・ハット」を書いた意味もありません。こうした観点からも、やはり保育園の資料は可能なかぎりデータ化したほうが、明日の質の向上に直結するのです。