来夏五輪に向けた横田真人コーチとの“メダル獲得大作戦”

今季は9月には5000mで日本歴代2位となる14分55秒83をマーク。10月18日のプリンセス駅伝と11月22日のクイーンズ駅伝では、最長3区で区間記録を1分10秒以上も更新する爆走を見せた。そして、前述したように12月4日の日本選手権10000mで驚異的な日本記録を打ち立てた。

写真=iStock.com/mbbirdy
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新谷の東京五輪での目標は、メダル獲得だ。

しかし、世界のトップクラスは10000mのラスト1周で400m60秒前後のスプリント勝負を演じている。一方、新谷はというとラスト1周は70秒を切るのが精一杯だ。

メダルを獲得する作戦は2つ。ラスト1周で世界の猛者と勝負できるキック力をつけるか、ラスト1周までにトップ集団を3人以内に削るか。来夏に向けて、横田真人コーチと“メダル獲得大作戦”を考えていくことになるだろう。

「結果を出すことは私がやるべきことです。過去の私には信用・信頼できる人がいなかったんですけど、いまの私には横田さんをはじめ信用・信頼できるスタッフがいます。私は本当にメンタルが弱くて、少しでも焦りがあると、どうしても自分の走りに影響してしまう。そういうところをカバーしてもらえる。強い味方ができたことが過去のロンドン五輪やモスクワ世界選手権と一番大きな違いです」

ひとりで戦ってきた新谷に信頼できる仲間ができた。それは新谷が「人」として成長した部分でもあるだろう。前男子800m日本記録保持者である横田コーチという“ブレーン”がついたことで、トレーニングや戦略の幅も広がった。重荷をおろした新谷は、メンタル的にずいぶん軽くなったという。

先月、別の選手の取材時に、たまたま新谷の練習している姿を見かけた。他のチームメイトは仲間と談笑するなどリラックスした雰囲気だったが、新谷のまわりだけは空気が違った。

ポイント練習を行うずいぶん前から、集中モードに入り、他を寄せ付けないオーラをビンビンに放っていたのだ。

そしてあえぐようなハードなメニューで自らを追い込んでいく。研ぎ澄まされた脚を見て、命を削って競技に取り組んでいるように感じた。

もちろん、本人はそんな過程を評価してほしいとも思っていない。だからこそ、筆者も新谷には東京五輪の「メダル」に手が届いてほしいと強く祈っている。

「どんな結果が出たとしても、仕事でやっている限りは満足することはないと思います」と話す新谷。そんな肝っ玉の据わったプロ根性を持つ元OLアスリートから目を離せそうもない。

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