最大の問題は、いつ何の目的で持たせるか


国民共通番号の導入を検討する、菅直人首相。(PANA=写真)

共通番号制度に関してゼロベースで考えるべき2つ目は、どのようなシステムでやるのかということ。番号については不規則な数字の羅列(現在は11桁)だけではなく、「声」や「指紋」などで個体を識別するバイオメトリクス認証の技術を導入したほうがいい。

その際、くれぐれも心しておかなければいけないのは、システム開発にサイバーゼネコンを使わないことだ。広く門戸を開いて、たとえばシリコンバレーやインドの人たちにも参加してもらい、システムのアイデアを募る。もっと大胆な提案をすると、15~25歳くらいまでのサイバーマニアを集めて組織化、システムを開発すれば、恐らく開発費用はサイバーゼネコンを使った場合の100分の1になると思う。

私が学長を務めるBBTでは、iPadの発売に合わせて授業でも活用できるように独自のシステムを開発した。外注すれば何十億円とかかったことだろう。それを社内の若手につくらせたところ、その100分の1でできたのだ。

番号をいつ何の目的で持たせるかも議論が必要となる。たとえばデンマークの場合、この世に生まれた瞬間にIDが与えられる。親が誰かによらず、生まれた瞬間に独立した一個の人間として国家と契約を結ぶのだ。

生まれたときに与えるのか、アメリカのように稼ぎ始めたときに納税番号として与えるのか、それとも成人して社会的責任が発生したときに番号を与え、それまでは保護者の番号でサブデータベース的に扱うのか。この問題を突き詰めていくと、これまで日本では憲法上も曖昧だった「個人と国家の関係」をどう定義するのか、戸籍との関係をどうするのか、今後も戸籍制度は維持するのか、という議論が避けて通れないことになる。国民データベースの議論をすると、戸籍制度そのものが法の下の平等を謳った憲法違反、という結論に至るはずだ。最近相続などの権利で問題になっている非嫡出子問題など、考えていけば自明の議論が日本では放置されてきたからだ。