選挙では激しく対立したが、結局は一緒にやっていくしかない

トランプ政権が誕生してからアメリカの分断の溝は日増しに大きくなり、それは大統領選挙で頂点に達した。国民は共和党の「赤」と民主党の「青」に分かれ激しく衝突した。性別、人種、所得、宗教……。それぞれの政党には強みを持つ支持層がある。しかし、それらの対立と片づけてしまえば、分断は深まるだけだ。

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選挙では赤と青に分かれた。だが、選挙が終われば、アメリカに住む同じ国民である。対立を続けても、いいことはひとつもない。いずれにしろ、一緒にやっていくしかないのだ。

民主主義を健全に機能させるには、そうしたリテラシーを持つことが重要だ。選挙は多数決で決まる。しかし選挙が終われば、多数派は少数派を包摂し、そして連帯していくための方法を考えなければいけない。それが民主主義だ。

「この大国の軌道を正す歴史的な重責を自覚してもらいたい」

バイデン氏の当選が確実視されると、日本の全国紙も一斉に社説のテーマに取り上げた。扱いも大半の新聞社が1本社説という大きさだ。

11月10日付の朝日新聞の社説は「米大統領バイデン氏当確 民主主義と協調の復興を」との見出しを掲げ、冒頭からこう訴える。

「米国社会の融和と国際秩序の再建が喫緊の課題である。この大国の軌道を正す歴史的な重責を自覚してもらいたい」

「融和」と「再建」。まさにその通りだ。トランプ大統領の手によって破壊された社会をもとの状態に、いやもっと素晴らしい社会に変えていく努力が欠かせない。かつて世界中の人々を魅惑したアメリカン・ドリームを復活すべきである。そのうえで国際社会に大きく貢献してほしい。

朝日社説はさらに訴える。

「型破りの大統領は来年1月に去る。だが、彼を支えた米社会の深層は変わらない。人種などの多様化に伴う摩擦に加え、広がる経済格差への労働層の怒りがくすぶり続けるだろう」
「地域、性別、世代など様々な分断をどう乗り越え、米国本来の多元主義を回復するか」
「勝利演説でバイデン氏は『団結をめざす大統領になる』と強調した。女性初の副大統領となるカマラ・ハリス氏とともに、国民統合の道を探ってほしい」

「人種差別」「経済格差」「様々な分断」。どれもアメリカ社会に巣くうやっかいな問題である。しかし、バイデン氏にはあきらめずに前に進むことを期待する。