ダメージを受けた投資家たちは、中国市場への警戒を強める
また、中国は現在、中央銀行の人民銀行が仮想通貨「デジタル人民元」の導入に向け、10月には深圳で5万人に1人当たり200元のデジタル人民元を配り、大規模な実験を実施するなど、欧米先進国に先駆けて中銀が管理する仮想通貨の普及を目指している。
台頭する民間のフィンテック企業は、習政権、党がデジタル人民元を基軸通貨に育て上げて安定的な金融システムをコントロールし続けていくうえで、何とも厄介な存在になるというわけだ。
一方、アントを持ち分法適用対象とするアリババにとっては、当局によるアントに対するIPO阻止と規制強化のダブルパンチで、今後の業績面で大きな不安材料になりかねない。ただ、今回のアントのIPO中止によってダメージを受けたのは米国系の引き受け証券会社、さらには投資先として大きな期待を寄せた機関投資家や個人投資家であることは言うまでもない。
アントの上場は半年程度遅れるとの観測を現地メディアは伝える。
ただ、今回のアントのIPO中止で中国当局に翻弄された投資家らは、習政権が掲げる「市場開放」は自らの手のひらの中で都合よくコントロールする、統制下での開放であることを身に染みて実感したに違いない。これが、この先の投資行動にどのような影響をもたらすか。それによっては、習政権にとって痛手ともなりかねない。