世界の投資家に中国共産党の力を誇示した狙いとは
中国共産党は10月26~29日に開催した重要会議、第19期中央委員会第5回総会(5中総会)で採択した2021~25年の次期5カ年計画で、これまで掲げてきた外国への市場開放と人民元・資本動向規制の段階的緩和の実現に向けて、一段の金融市場の開放を示唆した。
しかし、それはあくまで習政権、共産党の手のひらに収まった形での条件付きの金融市場の開放であって、目前でのアントのIPO阻止は、史上最大の上場を前に色めきたった世界の投資家に対して習政権、共産党の力を誇示する強力なメッセージを発したことになる。
半面、中国の国内事情として、旧来型の金融システムの維持、ひいては政治の安定が習政権にとっては重要課題であることは変わらない。その中で、緩やかな規制を前に金融市場で急激に影響力を増してきたアントに代表されるフィンテック企業による独走を許したままでは共産党による権力支配を損なうリスクにもなりかねない。そのため強権を発動したとも考えられる。
問題視されたのはアントの「与信プラットフォーム」
金融当局が今回、アントの事業で問題視したのは、その収益源だとされる。アントは、国有を含む銀行などの金融機関から融資を受けて中国全土の消費者や小規模企業に資金を提供するビジネスモデルが収益を支える。
金融当局は今、この与信プラットフォームにメスを入れ、アリババが目指すフィンテック帝国を切り崩そうともくろんでいるとされる。
ブルームバーグ通信は、中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)が銀行など資金の貸し手にアントのプラットフォームを使わないように促していると、事情に詳しい関係者の言葉を引用して伝えた。習近平政権と中国共産党にとっては、このままアントのIPOを認めてしまえば、中国の金融システムにおいてアントに大きな影響力を許してしまう。