不採算部門から復活する方法
【食品】仮に不採算部門に配属されたとしても、生き残り策がないわけではない。たとえば製造・販売・サービスの一体運営に変えるとか、職場を分社化するとか地域に密着した営業展開を進めるとか、さまざまな打つ手を自分なりに真剣に考えてやってみることだよ。誰もが撤退するしかないとみている事業ならばなおのこと、見事に黒字転換が果たせれば、それだけで注目度は高くなる。そうなれば本社の目に留まって返り咲きを果たすことも十分に可能だ。
【機械】うちもある事業に相当な投資をした結果、赤字続きで儲からない部署があった。そのうち社員の志気も下がるし、売却したくても値もつかないという状態が10年以上も続いた。ところが市況が変化し、取り巻く環境が好転して採算が取れるようになり、今は黒字に転換している。だからたとえ赤字の部署にいても、今だめだから永遠にだめということはないし、諦めないことも大事だ。もし、事業が廃止になっても会社を首になることはない。そうではなく、まかり間違えば大化けする可能性があると思えば、信念を貫いてやり続けることが本人にとってもプラスだと思う。
【食品】たとえば、うちにも部下の不始末で地方の支社に左遷された40代半ばの課長がいた。しかし、彼はいじけることなく支社で一生懸命仕事をした。あるとき駅の売店に会社の商品を置いてもらえば売り上げも伸びるのではというアイデアが浮かび、いろんなルートを使って販売したところ、それがうまく当たり、売り上げも急拡大したんだ。その功績もあったんだろうが、本社に戻り、今は執行役員をしているよ。
【流通】当社に環境安全室という部署があるが、そこの室長は社内資格でいえばグレード6なんだ。ところがほとんどの本社の部門長はグレード7ないし最高位の8に位置づけられている。その彼がなんで俺だけ6なんだと文句を言いにきたことがある。私は彼に「会社への貢献度が高ければグレードも上がる。あなたがやっている環境安全問題は大事な仕事だと思うが、グループ内への貢献が少ないし、そういうことを社内外にアピールするのも足りないのでは」と説明してやった。するとその後、一生懸命に勉強し、環境安全白書を作ったり、社外のパイプを駆使して講演もこなすようになり、その分野では結構な有名人になったんだ。今は関連会社の上席役員をしているよ。
【IT】1番気の毒なのは、事業を撤退するほどでもないが、かといって好転する兆しもない部署。しかもそこのベテランだから引き続きやってくれと言われる人。お取り潰しにはならないが、かといって大輪の花も咲くことはない部署にずっといる人は確かにつらい。しかし、そうなればなったでそこのリーダーなり部長にでもなれば、会社はちゃんと見ている。たとえ厳しい環境下でも会社や将来の組織のためにちゃんとやっているのであれば、上司や会社も彼に応えてやらないといけないという気になるし、うちでも実力があると思えば花形部署と同じように処遇しているよ。努力している人間に報いるのは会社の責任だと思っている。
【機械】会社にとってプロフィットセンターではないが、必要悪の部署をつくり、あてがい扶持として送られる社員も確かにいる。しかし、それでもやりようはある。もちろん会社の中では浮かばれなかったとしても、個人としてはやり方によってその道のエキスパートになるなど活躍することもできると思うね。
【電機】不採算部門に配属されたといっても決していじける必要はない。会社としては使えないから送るということはないし、ある程度彼ならやれるだろうと踏んで送り出しているのは間違いない。本人にとっては修羅場かもしれないし、とくに海外の工場の閉鎖を担当するのであれば、雇用問題を含めていかにうまく処理していくかという能力も問われる。
【IT】まあうちで海外工場の閉鎖担当として送り出す人材といえば、ピンかキリかでいえば、キリは送らないし、ピンのほうだね。でも超ピンは出さないね。失敗すると有能な人材を失ってしまうことになるからね(笑)。
【食品】似たようなケースなんだが、左遷転じて福となした例も結構ある。働き詰めの毎日で消耗してばかりいてはユニークな発想は出てこない。人はゆとりがあってこそアイデアが浮かんでくるものだ。もし閑職に回されたら、そのときこそ好機と捉えることだ。たとえばこれまでやりたくてもできなかった自己啓発の勉強とか資格を取ってもいい。長いビジネスマン生活の充電期と捉えるぐらいの気持ちを持つべきだろう。また考えようによっては何も今の会社にしがみつく必要もない。中小企業診断士とか社会保険労務士の資格を取って開業し、成功している人もいる。力を発揮するフィールドは社内とも限らないし、自身のキャリアを再度見直すことも有益だろう。