「私たちは『一宮モーニング三カ条』も掲げています。①一宮市内の飲食店にて提供②起源にならって卵料理をつける③できるだけ一宮産の食材を使う、を推奨。この地域には浮野養鶏場もあり、農作物も数多く栽培されており、こうした取り決めを行いました。
今の若い人には想像できないでしょうが、その昔『卵はぜいたく品』でした。高価な卵は桐の箱に入れて、おがくずを敷いていたほど。そうした歴史も伝えていきます」
コロナでは消えない生活文化がある
コロナ禍でリモートワークが広がり、「外出」や「人に会う」に特別な意味が出てきた。各地で新たな「ジモティー」=地元文化が育つかもしれない。
一宮では、若い世代も文化の担い手だ。例えば市内の修文女子高校の食物調理科の生徒は、毎年「おもてなしモーニング」メニューを考案し、駅前のカフェで提供する。地道な活動だが、歴代の高校生がモーニングのたすきをつなぐ。
もうひとつ興味深いのは「大都市と張り合わない」こと。名古屋市に通勤する人も地元を愛し、実家を出ても市内に自宅を持ったりする。モーニングコンテストのメニューでは張り合うが、名古屋や岐阜モーニングへの対抗心は薄い。
「この地域では、喫茶店は空気のような存在です。誰かと会ったら挨拶の次に『お茶でも行こうか』と連れ出す。喫茶店の少ない時代からお茶文化が根づき、90歳になる私の母は、嫁入り道具に抹茶セット一式を持ってきました」(同)
冒頭で紹介したイベントの「インスタグラム」採用は、ママ友の取り込みもねらったという。「若い世代向けにTikTok(ティックトック)も考えた」という発言は、他の地域団体幹部からは出てこないマーケティング視点だ。もともと豊かな地域が、本気になると強い。
繊維全盛期の工員は3交代制勤務で、夜勤明けは8時だった。昔も今も「朝から元気なまち」なのだ。「コロナで消えるのは本当の生活文化ではない」と感じながら当地を後にした。