1位の「宮園外し」が仕組まれていたという疑いが浮上
一方、経営協議会側の推薦者は一人だけだった。
残った10人から3~5人に絞りこむのが「総長選考会議」の役目である。9月7日に発表された第二次総長候補者は3人だけだった。それからである、学内が騒然となったのは。
永井 良三 (自治医科大学学長)
藤井 輝夫 (理事・副学長)
予備選でトップだった宮園氏の名がなく、第8位と下位だった染谷氏の名があったからだ。しかも前回総長選では5人だった第二次候補が3人に減っている。
この選考に先立ち、今年4月28日に総長選考会議の内規が改定されていた。改定では第二次総長候補者を「5名程度」から「3人以上5人以内」に変更。さらに「総長予定者の決定」の条でも、「投票の結果を考慮して総長予定者を決定する」を「調査及び意向投票の結果を考慮して総長予定者を決定する」と「調査」という言葉が加えられていた。このことから、「宮園外し」が予め仕組まれていたのではないか、との疑いが生じた。
ぴったりのタイミングで流れた「怪文書」の中身
医学系研究科長を3期務め、副学長の一人でもある宮園氏は、6年前の総長選では、現総長の五神真氏の次点だったため、今回も最有力候補と目されていた。それを何とか防ごうと総長選考会議の内規を変え、さらにぴったりのタイミングで「怪文書」が流れた。予備選トップの候補を落とすために「調査」という言葉を加えたようにみえる。
9月4日の総長選考会議では、選考で予備選の票数を考慮するかどうかで議論があった。学内委員が次々と「尊重すべきだ」と発言すると、「経営協議会の意義をないがしろにしている」と学外委員と言い合いになったという。その際、議論を終始リードし、時に後輩の学内委員を非難したのが、議長である小宮山宏氏だった。このやりとりが明るみに出れば、『半沢直樹』のように誰かが土下座する羽目になるかもしれない。
結局、4日の会議では、法務課の反対を押し切って、各自3~5人の名を書いて電子投票(無記名)を行い、7日に改めて絞り込むことになった。ここで出てくるのが先の「怪文書」である。この文書が指摘しているのは、2012年に浮上した分子生物学の第一人者だった加藤茂明教授(当時)の研究不正との関わりだ。
東大は2017年に計33本の論文で図の改竄や捏造があったとして、加藤氏ら4人を懲戒解雇相当とする処分を下している。この疑惑浮上時に医学研究科長であり、問題教授との共著が1冊あり撤回した宮園氏が総長になることは対外的にマイナスであるという理屈で、宮園氏を振り落とす方向へ議論を誘導したとみられる。「宮園氏はむしろ被害者」との擁護論も学内にはあり、匿名文書を真に受けるのはいかがなものかとする意見も出たのに、本人から聴取もせず、調査の手順を踏んだ形跡もない。